神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「もぐもぐ。美味じゃの〜。ルーチェス君のご飯は本当に美味じゃの」

「ありがとうございます」

「ご褒美に、お姉ちゃんが撫で撫でしてあげよう!」

そう言って、セカイお姉ちゃんは僕のほっぺたを撫で撫で。

何だこれ。幸せか。

フレンチトースト一つで、こんな幸せを噛み締められるとは。

『不思議の国のアリス』の世界、万歳。

…。

…と思ったけど、残念ながら、僕にセカイお姉ちゃんとのイチャイチャ同棲生活を楽しんでいる余裕はない。

幸せ過ぎて忘れそうになるが…この幸せは、長くは続かない。

何故なら、僕には制限時間があるからだ。

所詮僕は、この世界の人間ではない。

目の前にいるこの人も…限りなくリリスにそっくりではあるものの…リリス本人ではない。

ただの人間だ。

その証拠に、僕はこのセカイお姉ちゃんの心を読むことが出来た。

この世界は、いつぞや送られた異次元世界とは違って、魔法を制限されていない。

従って、僕はお得意の読心魔法を、いつも通り使える訳だ。

もし目の間にいるリリスのそっくりさんが、本当にリリスなのだとしたら。

僕には、セカイお姉ちゃんの心を読むことは出来なかったはずだ。

だって、もとの世界では…リリス相手に読心魔法は通用しなかったから。

それなのに、セカイお姉ちゃん相手に読心魔法が使えてるってことは…彼女はやはり、リリスとは別人なのだろう。

別人とは思えないくらい、そっくりさんだけど。

料理が苦手なところまで一緒とは。

紛らわしくて、そして愛おしくて…当初の目的を忘れてしまいそうになる。

そういう訳にはいかないって、分かってるつもりなんですけどね。

いくらこの世界の居心地が良くても、僕は帰らなければならない。

僕の仲間達が。

そして、本物のリリスが待つ、あの世界に。

…その為には。

「セカイお姉ちゃん。ちょっと質問なんですが」

「んー?何?」

「アリスのお茶会の招待状が何処にあるか、ご存知ですか?」

回りくどい質問は無し。

ど直球で核心を突いた質問をした。

すると、セカイお姉ちゃんはフレンチトーストを食べる手を止め、驚いた顔でこちらを見つめた。

…そして。

「お茶会?招待状…?何それ?」

と、きょとんと首を傾げた。

…知らないか。やはり。

まぁ、そんなに簡単なはずはないよな。

「あ、そうか。また愛人の名前?その子にお茶に誘われたの?」

挙げ句、とんでもない誤解をしている。

全く、失礼しちゃいますよ。

僕はいつだって、リリスに一途。

得体の知れない、魔法道具のアリスなんて…例えどんなに美人だろうと、僕の趣味ではない。

アウトオブ眼中、って奴だ。