神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

――――――…僕達が見た、謎の黒い影の正体も気になるけど。

「…うーん…」

「?どうしたの?」

最初に黒い影を見た夜からずっと、『八千歳』は難しい顔をしたままだ。

なかなかお化けが捕まえられないから、そのせいだと思っていた。

…しかし。

「ねぇ、ここだけの話なんだけどさー」

「何?」

「最近、学院長せんせーの様子、おかしくない?」

「…え?」

お化けの話、じゃなくて?

学院長の話?

しかも、様子がおかしいって…。

…学院長の様子…。

「…何かおかしい?」

お化けに過剰に怯えてるみたいで、そういう意味では、いつもとは様子が違うけど。

でも多分、『八千歳』が言いたいのは、そういうことじゃないんだろう。

少なくとも僕の目から見ると、特に様子がおかしいようには見えないけど…。

すると。

「だよね。俺もおかしいようには見えない」

…そうなんだ。

じゃあ、何でおかしいかどうか聞いたんだろう。

「でも、最近…糸で『聞き込み』してたら、どうも妙な噂が聞こえてきてねー」

「妙な噂?…それが、学院長の様子がおかしいってこと?」

「そーなんだよ。学院長せんせーが、最近変なんじゃないかって、生徒の間で噂になってる」

…そうなんだ。

そういえば、昼間…クラスの誰かが話してた気がする。

学院長が、最近変だって。

最近、お化けのせいで挙動不審になってるから、それで様子が変なんだろうと思って…あのときは聞き流してたけど。

「お化けのせいだけじゃないの?」

「そーだね。最近、人が変わったように…真面目になった、って言われてる」

…真面目…。

真面目な学院長か…。

「…それは気持ち悪いね」

「でしょ?気持ち悪いんだよ」

学院長が、学院長じゃないみたいだ。

やっぱり、学院長にはいつもの学院長でいてもらいたい。

「お化け騒ぎのせいで、情緒が不安定なのかな?」

「どーなんだろ…?」

うーん、と二人で首を傾げる。

「…とりあえず、様子見に行ってみよっか」

「うん」

学院長の様子がおかしいっていう、その噂が本当なのか。

確かめてみないことには、分からない。