神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

…一時間後。

「うわぁ〜…。ルーチェス君、良い匂い」

「はい、出来ましたよ。フレンチトースト」

僕は焼けたばかりのフレンチトーストを、フライ返しを使ってセカイお姉ちゃんのお皿に乗せた。

即席で作ったにしては、我ながら自信作。

メープルシロップたっぷりの、ふわとろフレンチトーストである。

学院長だったら、飛びついてるだろうな。

「食べて良い?ねぇ食べて良い?」

「良いですよ、どうぞ」

「わーい。いただきまーす」

フォークでフレンチトーストを切り分け、ぱくっと一口。

途端に、セカイお姉ちゃんの顔に満面の笑みが広がった。

素晴らしい。

僕は、この笑顔を見る為に生きていると言っても、過言ではない。

まぁ、今目の前にいるのは僕の恋人本人じゃなくて、ただのそっくりさんなんだけど。

「ん〜!おいし〜!」

「それは良かった」

「さすがルーチェス君!よっ、天才!我が家の主夫!」

お褒めに預かり光栄です。

やっぱり、この家では僕が主夫なんですね。

そんなことだろうと思った。

リリスも、料理は壊滅的に下手くそだからな。

このセカイお姉ちゃんも、リリスの料理の腕に負けず劣らずだった。

底辺の争いしてるよ。

先程、僕はセカイお姉ちゃん作の消し炭目玉焼きを口にしたが。

正直、その後のことはよく覚えていない。

口に入れた瞬間に、あまりの不味さに脳みそがショートしたらしい。

この場合、覚えていないということは、とても幸せなことなのかもしれない。

とりあえず、人間の食べるものではなかったのは確かだ。

生でも食べられる食材を使って、あれほど不味いものを作り上げるとは…。

セカイお姉ちゃんって、むしろ別の意味で才能があるのでは?

さすが僕の嫁。可能性の塊ですよ。

まぁ、危うく僕…死にかけたんですけどね。

大丈夫ですよ。僕不死身なんで。

不死身じゃなかったら死んでると思うけど。

で、意識を取り戻したのが15分ほど前。

空気の美味しさというものを再確認しつつ、僕はセカイお姉ちゃん作の消し炭朝ご飯を、心苦しいながら全部破棄。

代わりに、有り合わせの材料でフレンチトーストを作ってみた。

そして、現在に至る。