神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

この僕が、見間違えるはずがない。

何があっても。この顔だけは。

リリスだ。リリスが僕の前にいる。

精神世界じゃなくて、現実に。

…いや、ここも現実世界とは、ちょっと違うかもしれないが。

でも、間違いなく確かに、リリスが目の前にいる。

しかも、珍しいエプロン姿で。

僕は思わず、ポカンとしてリリス…と同じ顔をしたその人物を見つめてしまった。

すると。

「え、リリス?」

リリスは、きょとんと首を傾げた。

え?

「リリスって誰?」

「…え。それは…」

リリス…は、あなたのことでは?

…しかし。

「…あ、分かった。さては愛人の名前だな?」

と、リリスは悪戯っぽく笑って言った。

え、浮気?

失敬な。僕は生まれてこの方、リリス一筋ですよ。

僕ほど好きな女の子に一途な人間も、なかなかいないと自負しているくらいなのに。

「もー。間違って愛人の名前を呼んじゃうなんて。ルーチェス君たらうっかりさんなんだから」

「…ルーチェス君…」

僕の名前は、確かにルーチェスだが。

そう呼ぶ人は、まず滅多にいない。

物凄く新鮮な気分だ。自分の名前のはずなのに。

何だかんだ、ナジュ君と呼ばれることに慣れてしまって…。

…リリスは、僕のことをルーチェス君とは呼ばない。

つまり、今僕の目の前にいる、このリリスのそっくりさんは…。

「私はセカイお姉ちゃんだよ、セカイお姉ちゃん。君の可愛い奥さんなのだ」

えへん、と胸を張り。

リリスのそっくりさん、改め…セカイお姉ちゃんが言った。

「…成程…」

…そういうことでしたか。

何だか納得。

「ほぇ?成程って?」

「いえ、こちらの話です」

全然事情は分からないけど、しかしこれだけは分かる。

…さすが、僕って本当趣味が良いなぁ。

よその世界に来ても、リリスと同じ顔の女性を選ぶとは。

何回見ても可愛い。

ただ、名前はリリスではないらしい。

見たところ…。

「…ちょっと失礼」

「ふぇ?」

僕はセカイお姉ちゃんのほっぺたを、ぷにっと摘んでみた。

「るーひぇすくん、らにひてるの?」

「触診です」

もしかしたら、さっきのハンプティ・ダンプティ辺りが。

けしからんことを企み、リリスのそっくりさんを作って、僕を騙そうとしているのかもしれない。

故に、触診で確かめてみようと思う。

リリスのほっぺたのぷにぷに具合は、僕、毎日チェックしてるから完璧ですよ。

え?ゲス?

…何が?

ぷにぷにぷに。

「…ふむ」

ほっぺのぷにぷに具合、良し。

では触診、その2。

ほっぺの次は、お腹のぷにぷに具合を確認。

「ふにゃぁ〜」

セカイお姉ちゃんは身をくねらせていたが、構わずぷにぷにする。

え?ゲス?

…何が?

「ふむ」

お腹のぷにぷに具合、良し。

相変わらず、程良いお肉のつき具合である。

では最後に。

ややボリュームに欠ける、しかし、良い感じに手のひらに収まる、程良いサイズのバストをぷにぷに。

「ふにゃ〜っ!ルーチェス君のえっち〜!」

「ありがとうございます」

いや、これは触診ですから。

疚しいことは何もないですから。決してゲスなことはない。

ぷにぷにって言うか…もみもみに近い感触。

胸のぷにぷに具合、良し。

オールグリーンである。