神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

何だか怪しい気配がするから、このままフェードアウトしたい気分なのだが…。

…さすがに、そうは行かないか。

分かりましたよ。見に行きますよ。

僕は意を決して、寝室らしきその部屋から出た。

廊下に出ると、焦げ臭い匂いが一層強くなった。

しかし…何かが燃えているという訳ではなさそうだ。

それは安心した。

どうやら匂いの根源は、この先にあるキッチンにあるようだ。

廊下を抜けると、広々としたダイニングキッチンに辿り着いた。

ダイニングテーブルの上には、丸焦げのトーストと、丸焦げの目玉焼き…らしきものと、丸焦げの炭の盛り合わせが乗っていた。

成程、知ってますよ。消し炭フルコースですよね。

たまに食べたくなるときありますよねー。分かる分かる。

…しかし、そのときの僕は、消し炭まみれのテーブルに注意を払っている余裕はなかった。

そんなことはどうでも良かった。

僕はただ、目の前にいる人物に、驚きのあまり言葉が出なかった。

「あっ、ルーチェス君。おっはよ〜!」

天真爛漫な笑顔でこちらを見る、その人物は。

僕が誰よりもよく知っている…僕が誰よりも愛している…その人と、全く同じ顔をしていた。

「…リリス…?」

呆然と、僕はその名前を呟いた。