神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

もうこの時点で、凄く嫌な予感。

「誰なんだお前達は?一体どうやってここに入ってきた!?」

「…」

…それは…。

…ちょっと、話すと長くなるんだけど。

説明するの面倒だから、何も聞かないでもらえないかな。

「しかも…勝手に入ってきた上に、ペンキをひっくり返して!」

「いや、それは僕達じゃなくて…」

犯人は白ウサギだよ。僕は見た。

しかし。

「何を言い訳してるんだ。ここにいるのはお前達だけだぞ?お前達以外の誰やったって言うんだ!」

「いや、だから、それは…」

「全くけしからんガキ共め。ここを何処だと思ってる?公爵夫人のお庭だぞ!自分達が何をしたのか分かってるのか!?」

だから、それは白ウサギに言ってよ。

不法侵入については弁解の余地もないけど、ペンキをひっくり返した罪まで背負うつもりはないよ。

しかし、庭師らしきお兄さんは、全く聞く耳を持たない。

この世界の人達の欠点は、怒り出すと人の話を全く聞かなくなるところだな。

「俺が公爵夫人に報告したら、お前達は一巻の終わりだぞ!」

「…一巻の終わりって、何をされるの?」

「そんなの決まってるだろう。公爵夫人の前に引っ立てられて…」

そこで、打ち首獄門?

「…三日間、厨房に閉じ込められて、ミルフィーユを作らされるんだからな!」

意外と大したことのない罰だった。

そのくらいなら、いくらでもやってあげるよ。

何?その、罰になりそうで、実は全然罰になりそうもない、中途半端な罰は。

しかし。

制限時間に追われる僕達にとっては、例え三日間であっても、時間を取られるのは望ましくない。

「分かった、分かったよ。悪かったよ」

『八千歳』もそれを察して、言い訳をせずに素直に認めた。

僕達じゃないんだけどね。ペンキを溢したのは。

「謝るから、公爵夫人に言いつけるのはやめてくれないかな」

と、頼むと。

「よし、良いだろう…。じゃあその代わりに、お前達が汚した花壇の花を、自分達で綺麗にするんだ」

え?

「それから、庭中の花に色を塗ること!これがお前達への罰だ」

…やっぱり公爵夫人に言いつけて良いよ、と言ってしまいそうになった。

結局、やっぱり面倒臭いことに発展している。

…この広い庭の花、全てにペンキを塗れと?

いくらかはもう色を塗ってあるけど、まだほとんどが白いままだ。

これを全部塗ってたら、それなりの時間が、かかりそうだ。

まぁ、三日間ミルフィーユの刑よりはマシだけど…。

「ペンキはここ、エプロンとハケはここにある」

庭師のお兄さんは、僕達の返事も聞かず、テキパキと指示を始めた。

「その間、俺は出掛けてくるからな。お前達、サボらずに仕事するんだぞ!」

自分はサボる癖に、人にはサボるなと言うのか。

こんな大人にはなりたくないなぁ。

「…この庭師こそ、公爵夫人に言いつけるべきなんじゃない?」

「確かに…」

ミルフィーユの刑、受けるべきなのは君なんじゃないかな。

現状僕達に、他に選択肢はないから…従うしかないけどさ。