神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

ここ、いちごミルフィーユ村って言うんだ。

美味しそうな村だね。

ミルフィーユの丘にある、いちごミルフィーユ村かぁ。

もしかして、他にも別の村があるんだろうか。

りんごミルフィーユ村とか。チョコミルフィーユ村とか。

ここいら一帯、ミルフィーユ村落か。

面白いね。

で、このおばさん、今何て言った?

「ホウキとちりとりを持って、村中掃除して回りなさい!」

…。

…だって。

「…どうしよう、『八千歳』…。何だか面倒なことになってきた」

「本当だよ。掃除なんて、ツキナの手伝いだけで充分だよ」

確かに。

しかし、いちごミルフィーユ村のおばさんは、強引に僕達に、ゴミ袋と竹箒を押し付けてきた。

どうしよう。迷惑だ。

「そんなことより、僕、白ウサギを探して…」

「そーだよ。ついでに、お茶会の招待状とやらを…」

「話があるなら、掃除の後にするんだね。とにかく、あんた達が汚した場所を綺麗にしないことには、口を利かないよ!」

どうしよう。横暴だ。

「…」

「…」

僕と『八千歳』は、互いに顔を見合わせた。

言葉を交わさずとも、お互い考えていることは分かる。

僕達の取れる選択肢は二つある。

一つ目。このおばさんの戯言を無視し、ホウキを叩き折り、ちりとりを放り投げ。

ついでに、おばさんの首筋に小刀を当て。

尋問し、拷問して、白ウサギと招待状に関する情報を吐かせる。

実にシンプルで、そして僕達にとっては至って簡単な方法だ。

ついつい、この慣れたやり方で良いんじゃないかと思ってしまうが…。

「…」

僕は、再び『八千歳』の顔を見つめた。

『八千歳』もまた、無言で僕をじっと見つめていた。

考えていることは、お互い同じだ。

…この世界には、この世界の常識がある。

僕達のやり方は通用しない。

手っ取り早く、暗殺者流に事を解決したいところだが…。

恐らくこの世界で、そのやり方は通用しないだろう。

…仕方がない。

なら、二つ目の選択肢を選ぶしかない。

…え?二つ目は何だって?

そんなの決まってる。

「…分かった。やるよ」

大人しく全てを受け入れて、おばさんの言う通り、村中を掃除する。

これが、二つ目の選択肢だ。

そして、この方法が…今回の場合は、最も手っ取り早い方法なのだろう。