「書かれてあることに従え」と言われても、何て書いてあるのか分からないので。

結局、自分達で何とかするしかない。

指示に従わなきゃ、招待状をもらえないのだとしたら…僕達がこの指示を読めないというのは、致命的な気がするが。

しょうがないよね。読めないんだから。

それ以外の方法で、元の世界に戻る方法を考えよう。

…え?そんなのあるのかって?

分からないけど、『八千歳』と一緒だから、何とかなりそうな気がする。

一人だったら、ちょっと不安になりそうだけど。

『八千歳』と一緒だからね。

『終日組』の暗殺者集団が攻めてきても、特に不安はない。

向かうところ敵なし、って奴だ。

多分、『八千歳』も同じ気持ちなんだろう。

指示が読めないという、なかなかの危機に瀕してもなお…けろっとしていた。

まぁ、何とかなるだろう。多分。

焦るにはまだ早いってね。

「どうしたら良いのか分からないけど…。とりあえず、周囲の散策してみようか」

「そーだね。何か見つかるかも」

まずは、この「白ウサギの世界」を知るところから始めよう。

何か、面白いものが見つかるかも。

…既に、目の前の川の色が面白い。

この水って、飲めるのかな。飲んだら危なそうな色だけど。

「川の水もそうだけど…空も、変な色だね」

「うん。黄緑色の空なんて初めて見たよ」

「雲も紫色だしね」

黄緑色の空。紫色の雲。そして虹色の川。

変な世界に迷い込んでしまったものだ。

「見て、あそこに咲いてる花」

「うわ。何あれ…トランプ模様のチューリップ?」

「あんな花があるの?」

「俺は見たことない。ツキナが見たら、喜ぶかもなー」

あれも、この世界特有の植物なのかな。

「変な世界だなー。面白いけど。俺達ここで何すれば…」

僕と『八千歳』は、同時に足を止めた。

川の向こうに、白いウサギがたたたっ、と走っていくのが見えた。

…あのウサギって、もしや。

同じことを考えた僕と『八千歳』は、すぐさま行動に移した。

僕は力魔法で助走をつけ、一気に川を飛び越え。

『八千歳』は透明な糸を足場代わりに、ほとんど同時に川を飛び越えた。

…これでも、スピードには自信があるつもりだ。

僕と『八千歳』が本気になって追えば、捕まえられないものはないはずだった。



…しかし。