――――――さて、こちらは学院長室。

学院の何処かで、三人の五年生の女子生徒が、愕然としてシルナの背中を見つめていたことも知らず。

俺達は、例の黒い影対策を考えていた。

…の、だが。

「お札。お守り。お札お守りお札お守り…」

「…」

「破魔矢。盛り塩。祓串…」

シルナは、もごもごと何かを呟きながら、巨大な段ボール箱を漁っていた。

何をやってるんだ、こいつは…。

あの後、目が覚めてからというもの。

シルナはずっと挙動不審である。

まず、物音に敏感になった。

ちょっと誰かの足音がしたら、もう、飛び上がる勢いで驚いてんの。

何なら、鏡に自分の影が映っだけで「うぴゃぁぁぁ!」とか言ってる。

重症だよ。

例の黒い影を見てからというもの、完全にガチビビリモードになってしまったらしい。

情けない学院長だよ…。

「よし、羽久。お札を貼りに行こう」

なんて言い出してるしな。

「お札って…お前…」

「魔除けのお札だから。神社に行ってもらってきたの。これを校内に…1メートルおきに壁に貼ろう!そしたら、もう何も出てこないはず!」

不気味な校舎だな、おい。

生徒達が悲鳴をあげるだろ。やめろ。

「それから盛り塩だ。全部の教室の四隅に、盛り塩を置こう」

だから、生徒がビビるからやめろって。

何が嬉しくて、盛り塩が置かれた教室で授業を受けなきゃならんのだ。可哀想に。

盛り塩が気になって、授業に集中するどころじゃないだろう。

しかし、誰よりも黒い影にビビっているシルナは。

「あとは、霊媒師だ。霊媒師を呼ぼう」

…なんか言ってるぞ。

霊媒師…?

「霊媒師にお祓いをしてもらおう!それが一番だよ」

お祓いって…。

まぁ、間違ってはないのかもしれないが…。

「やめなさい、馬鹿らしい。霊媒師なんて皆インチキです」

身も蓋もないイレースが、ばっさりと切り捨てるように言った。

ま、まぁ…。皆インチキかどうかは分からないだろ。

もしかしたら、中には本当に頼りになる霊媒師も、いるかもしれない。

だが、運悪くインチキ霊媒師に捕まってしまったら。

高額な霊感商品みたいなのを売りつけられて、詐欺に引っかかる可能性もある。

幽霊なんかより、そういう詐欺師の方が怖いよな。

しかし、シルナは。

「例えインチキでも良い!とにかく、霊媒師に来てもらいたい!」

血走った目で、血迷ったことを叫んでいた。

…お前って奴は…。

「…羽久さん。このつまらない男が、つまらない霊媒師なんて呼ばないよう、ちゃんと見張っていてください」

と、イレース。

「あぁ…分かったよ」

つまらない男だってさ、シルナ。

…すると、そこに。

「はぁ…。呼んでないときは来る癖に、来て欲しいときは来ないんですよね。廃品回収ですかね?」

「ま、まぁまぁ…。そう簡単にはね…」

うんざりした様子のナジュと、それを宥める天音が、学院長室にやって来た。