神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

攻め込まれたんだから、迎撃に当たるのは当然でしょう。

厚顔無恥な他国の侵略者など、返り討ちにしてやれば良いのです。

「で、でも…!そんな、戦うなんて野蛮なこと…」

「何が野蛮なんです。先に殴りかかってきたのは向こうなんだから、こちらが何をしようと、それは正当防衛でしょう」

竹箒を持って、殴りかかってきたのだから。

こちらも鉄パイプを手に、思いっきり殴り返してやれば良い。

身の程を思い知れば、二度と侵略などしてこないでしょう。

…それなのに。

「ほ、他に方法があるはずです。そんな、戦うなんて方法じゃなくて…」

平和主義者か。この女王。

平和主義と言えば聞こえは良いが、要するに、自分の命令のもとに自国民が死ぬことに、覚悟を決められない腰抜けだ。

…イライラしてきた。

「元々、ダイヤの国とは友好関係を築いていたんだし…。ダイヤの国の女王様に会わせてもらって、話し合って、穏便に帰ってもらえたら…」

「…ぬるい。ぬるいんですよ、あなた」

「…え…?」

自国が侵略されているのに、何故こちらがご機嫌を伺って、侵略国のトップに頭を下げなければならないのか。
 
そんな腰の引けた態度だから、舐められるんでしょう。

…もう良い。この女王に、覚悟と決断を迫った私が馬鹿だった。

この女王に任せていたら、あっという間にこの国は占領されてしまう。

そうしたら、招待状を書いてもらう約束も、なかったことになりかねない。

それだけは防がなくては。

…なら、その為に何が出来るか。

…要するに、侵略してきたダイヤの国とやらが、諦めて自分の国に帰れば良いのだ。

そうすれば、この国の危機を脱することが出来る。

…良いでしょう。

国のトップに立つ者として、威厳の欠片もないこのハートの女王に代わり。

この私が、失礼な他国の侵入者に…。

…裁きの鉄槌を食らわせてやるとしましょう。

「…ちょっと、出かけてきます」

「え、で、出かけるって、何処に…」

「…決まってるでしょう?」

侵攻中の、ダイヤの国の軍隊に…直談判しに行くんです。