神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

…どうしましょう、じゃないんですよ。

どうにかするしかないって、さっき言ったでしょう。

「どうしましょう…。まさかダイヤの国が攻めてくるなんて…一体どうして…。あぁ、どうしましょうどうしましょう…」

「じょ、女王様…。僕達はどうしたら良いんですか…?」

「ど、どうしましょう…。どうしたら良いんでしょう…?」

…この調子で。

主従揃って、一生頭を抱えていれば良い。

遠からず、その攻めてきたダイヤの国とやらに占拠されて、植民地にされることだろう。 

それはそれで、無能なハートの国の運命だ。

仮にも国のトップに立つ者が、国の危機を前にして、頭を抱えるだけとは。

こんな無能な国は、いっそ他国の植民地にされた方が良いのではないかとすら思う。

…しかし。

「どうしましょう、どうしましょう…。…どうしたら良いのでしょう?どうか、助言してくださいませんか」

…あろうことか。

ハートの女王は、国の危機に瀕してなお、異国人の私に助言を求めてきた。

もうあなたの国に未来はないから、さっさと降伏して、植民地にされるなり、属国になるなり好きにしなさい、と言いたかった。

…しかし、それを言うことは出来ない。

そんな風に突き放すのは、可哀想だから?

…違う。

この人が女王の座から降ろされたら、アリスのお茶会の招待状を用立ててもらうという、あの約束を反故にされてしまうかもしれないからだ。

約束を果たすまでは、この人には権力の座についていてもらわなければ困る。

…仕方がない。
 
これが最後。これが最後です。

「ど、どうしましょう、どうしましょう…。私はどうしたら良いのでしょう…?」

…全く、この期に及んでうじうじと。

腹を括り、覚悟を決めなさい。情けない。

「…ダイヤの国、というのは?」

「え?」

「ダイヤの国というのは、隣の国ですか?」

「え、えぇ…そうです。ダイヤの国とは…ずっと友好関係を築いてきたのに…」

友好関係(笑)。

笑止。

簡単に国境を破られている癖に、よく友好なんて言葉が使えたものです。 

仲が良いと思っていたのは、あなただけだったようですね。

まぁ、上に立つのがこんな無能の女王じゃ、他国にとっては良い獲物でしょう。

こんな無能な女王、さっさと蹴落としてしまえば、なし崩し的にハートの国を手中に収めることが出来る。

むしろ、これまで他国に侵略されなかったことが不思議なくらい。

「そ、それなのに…いきなり攻めてくるなんて…!あぁ、こんなことになるなんて。どうしま、」

「どうしましょうじゃない。やるんですよ。さっきも言ったでしょう」

いよいよ、この人の「どうしましょう」に嫌気が差してきた。 

チョコレート菓子を前にして、気持ち悪い笑みを浮かべている学院長のようだ。

横っ面を張り倒したくなる。

「や、やるって…?」

「迎え撃つんです。この国にも兵隊はいるんでしょう?戦うんですよ」
 
「た、戦う…!?」

驚愕に目を見開くハートの女王。

…何かおかしなことでも言いました?