神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「じ、じゃあハリネズミは?ハリネズミには、どうやって言うことを聞いてもらえば…」

ハリネズミですって?

「言うことを聞かなければ、その針を全部毟ると脅しなさい」

「…!じゃあ、フラミンゴは…?」

「青いペンキを頭からぶっかけて、青いフラミンゴにしてやると脅しなさい」

「う、ウミガメは?」

「甲羅を引っ剥がしてやると脅しなさい」

「グリフォンは?」

「拳骨を食らわせてやりなさい」

「ぐ、グリフォンだけ野蛮…!」

だって、それがどういう生き物なのか知らないんだから、仕方ないだろう。

とにかく殴っておけば、大抵の動物なら言うことを聞く。

そういうものです。

「そ、そんなやり方で…言うことを聞かせて良いんでしょうか…?」

「良いんでしょうか、じゃない。やるんですよ」

あなたに足りないのは、その実行力だ。

何度も言ってるでしょう。

うじうじうだうだ言ってないで、とにかく動け、と。

やらずに後悔するより、やって後悔しなさい。

あなたには、その決断力、実行力が足りない。

だから臣下に舐められるようなことになる。

全く、情けないことこの上ない。

「そ、それで上手く行くんでしょうか…」

「そんなことはどうでも良いんですよ」

「え?」

女王の悩みなど、私にとっては路傍の空き缶ほどもどうでも良い。

私はあなたの(下らない)相談に乗っているのだから、そろそろ私の要求にも応えてもらいたいところですね。

「お茶会の招待状を書いてもらうという約束、お忘れではないですよね?」

もし忘れているというなら、脳天に拳骨を落として思い出させてあげましょう。

…と思ったが。

「勿論…それは覚えてますよ」

そうですか。

拳骨を落とす必要はないようですね。

「では、早いところ約束を果たしてはもらえませんか」

「それは…分かってますけど…」

「…けど、何ですか」

「…もう少し…もう少しだけ、私の相談に乗ってもらえませんか?」

…何ですって?

「私には制限時間があるのですが」

「えぇ。制限時間までには、必ず招待状をお渡しします。だから…それまで、もう少しだけ、私を助けて欲しいのです」

「…」

…なかなか厚かましい女王ですね。

「あなたの意見は、これまで私が出会った多くの方とは異なっていて…斬新で…とても参考になるのです」

そうですか。

あなたの周りにいる家臣は、どうやら随分生温い意見の持ち主ばかりだったようですね。

「だから、あなたに助言して頂きたくて…。もう少しだけ…駄目ですか?」

「えぇ、駄目です」

「えっ」

えっじゃないんですよ。

私は急いでいると言ったでしょう。

下手に出て頼めば、私が言うことを聞いてくれると思いました?

そんなに甘いことはありません。

「う、うぅ…。そ、そこを何とか…」

「もう充分、あなたの相談には乗ったはずです。そろそろ、私の要求にも応えてもらわないとふびょうど、」

と、言いかけたそのとき。

槍を持ち、鉄兜を被った、胴体がトランプの兵隊が。

「じょ、女王様。た、大変です!」

ノックもせずに、女王の応接間に入ってきた。