神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

大体、私に女王の愚痴に付き合う義理などない。

さっさと招待状を書いてもらいたい。

って言うか、あなた、それほど人望がないのに。

アリスに招待状をお願いして、ちゃんと書いてもらえるんでしょうね?

頼んだけど、言うこと聞いてもらえませんでした、なんてことになったら。

…いっそハートの女王を弑逆して、私が女王になろう。

女王の座など興味はないが、女王の権力には惹かれるものがある。

「あぁ、どうしましょう、どうしましょう…」

…イラッ。

口を開けば、どうしようどうしようと…。

頭を抱えている暇があったら、どうすれば問題を解決出来るか、もっと建設的な方法を考えるべきだ。

それもせずに、ひたすら口癖を呟くばかりで。

それじゃあ、何も解決しないのは当たり前というもの。

「…良いですか。ぐだぐだ考えている暇があったら、先に行動を起こすべきです」

「こ、行動というのは?」

…そうですね。

回りくどいのは嫌いですから、ここは手っ取り早く行きましょう。

臣下が言うことを聞かない、というのが問題なんでしょう?

だったら、話は早い。

実力行使、あるのみ。

「死刑執行人が言うことを聞かないなら、その執行人を死刑にすると脅してやりなさい」

「えっ」

役目を果たさない死刑執行人なら、生かしておく意味がない。

己の身が危うくなれば、態度を改めもするだろう。

改めないなら、そのまま執行人を処刑してしまいなさい。

その方が話が早い。

「そ、そんな…でも…」

「でも、ではありません。あなたのその優柔不断な態度が、臣下を付け上がらせているんです」

要するに、舐められているということだ。

そりゃあ、こんな優柔不断な女王に、威厳もへったくれもあったものではない。

上に立つ者の風紀が乱れていれば、下が言うことを聞かないのは当然のこと。

イーニシュフェルト魔導学院を見てみなさい。

上に立つ学院長があんなだから、色ボケ教師だの、夜間外出常習犯だのが、学院内に蔓延っている。

まとめて処刑してやろうか。

上に立つ者は、常に毅然とした態度であらなければならない。

「女王として威厳ある姿を見せないから、臣下に無視されるんですよ」

「そ、そうですか…。威厳ある態度…。どうしたら良いんでしょう…?」

まずは、その「どうしましょう」という口癖をやめること。

そして、すぐに他人に相談し、頼るのをやめることですね。

舞踏会に着ていく服でさえ、他人に決めてもらわなきゃ、自分では決められないというのだから…嘆かわしい。

こんな女王では、無視したくなるのも当然というものだ。

『不思議の国のアリス』原作に出てくるハートの女王が泣いてますよ。