俺は、十歩ほど後ろに下がった。
助走の為だ。
少し助走して、橋の先端ギリギリまで来たら、思いっきり踏み込んでジャンプ。
食料庫に向かってダイブする。それだけ。
実に分かりやすい。
さて、手が届くと良いのだが。
ビビッてちゃ始まらない。
恐怖で足が竦む前に、さっさと飛ぼう。
「…よし」
生憎俺は、まだ死ぬ気はないんでね。
精々、生きて明日の陽の光を拝ませてもらおう。
俺は助走をつけて、先端ギリギリに来たとき、強く箸を蹴りつけた。
ふわりと身体が中に浮かんだ。
行け。届け。
時間としては、恐らく1秒くらいの出来事だったのだろうが。
俺にとっては、まるでスローモーションのように感じた。
「ふっ…ぐ…!」
精一杯伸ばした手が、食料庫の縁に届いた。
…よし…届いた。
手を滑らせないよう、俺は強く食料庫の縁を掴んだ。
そのまま、ぐいっと身体を持ち上げ、食料庫によじ登った。
…ふぅ。
かなりギリギリではあったが、何とか辿り着けたようだ。
はぁ…ネズミに追いかけられるより、命の危機を感じた。
「羽久!羽久、大丈夫!?」
食器棚から身を乗り出すようにして、シルナが大声で尋ねた。
「大丈夫だ!」
俺もまた、大声で答えた。
けど、今の俺達の大声なんて、通常サイズの人間には全然聞こえないんだろうなぁ。
誰もいないから良いけど。
「よ、良かった、羽久…。じゃあ、私も行くね!」
「いや、ちょっと待て」
後から続こうとするシルナを、俺は制止した。
「どうしたの?」
「…」
…今しがた、俺が飛んでみて分かったが。
目で見るより、結構距離があった。
俺でさえギリギリ届いたのだ。
運動音痴でビビリチキンなシルナでは、届かないかもしれない。
シルナまで飛ぶのは、危険過ぎる。
「やっぱり、お前はそっちで待っててくれ。ここは俺が…」
「やだ、行く!」
…駄々っ子かよ。
「無理をするなって言ってるんだ。お前じゃ届かない…」
「いや、絶対に行く」
「…シルナ…」
「羽久が行くところには、私も行く。それが何処かは関係ない」
…そうか。
…そうだな。
「…分かったよ」
そこまで覚悟を決めているなら、躊躇うことはないな。
シルナなら大丈夫…そう信じるしかないな。
いや、信じよう。
俺は、シルナの相棒だからな。
助走の為だ。
少し助走して、橋の先端ギリギリまで来たら、思いっきり踏み込んでジャンプ。
食料庫に向かってダイブする。それだけ。
実に分かりやすい。
さて、手が届くと良いのだが。
ビビッてちゃ始まらない。
恐怖で足が竦む前に、さっさと飛ぼう。
「…よし」
生憎俺は、まだ死ぬ気はないんでね。
精々、生きて明日の陽の光を拝ませてもらおう。
俺は助走をつけて、先端ギリギリに来たとき、強く箸を蹴りつけた。
ふわりと身体が中に浮かんだ。
行け。届け。
時間としては、恐らく1秒くらいの出来事だったのだろうが。
俺にとっては、まるでスローモーションのように感じた。
「ふっ…ぐ…!」
精一杯伸ばした手が、食料庫の縁に届いた。
…よし…届いた。
手を滑らせないよう、俺は強く食料庫の縁を掴んだ。
そのまま、ぐいっと身体を持ち上げ、食料庫によじ登った。
…ふぅ。
かなりギリギリではあったが、何とか辿り着けたようだ。
はぁ…ネズミに追いかけられるより、命の危機を感じた。
「羽久!羽久、大丈夫!?」
食器棚から身を乗り出すようにして、シルナが大声で尋ねた。
「大丈夫だ!」
俺もまた、大声で答えた。
けど、今の俺達の大声なんて、通常サイズの人間には全然聞こえないんだろうなぁ。
誰もいないから良いけど。
「よ、良かった、羽久…。じゃあ、私も行くね!」
「いや、ちょっと待て」
後から続こうとするシルナを、俺は制止した。
「どうしたの?」
「…」
…今しがた、俺が飛んでみて分かったが。
目で見るより、結構距離があった。
俺でさえギリギリ届いたのだ。
運動音痴でビビリチキンなシルナでは、届かないかもしれない。
シルナまで飛ぶのは、危険過ぎる。
「やっぱり、お前はそっちで待っててくれ。ここは俺が…」
「やだ、行く!」
…駄々っ子かよ。
「無理をするなって言ってるんだ。お前じゃ届かない…」
「いや、絶対に行く」
「…シルナ…」
「羽久が行くところには、私も行く。それが何処かは関係ない」
…そうか。
…そうだな。
「…分かったよ」
そこまで覚悟を決めているなら、躊躇うことはないな。
シルナなら大丈夫…そう信じるしかないな。
いや、信じよう。
俺は、シルナの相棒だからな。


