神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「それで?どうやって向こうに飛び移るんだ?」

「飛び移るんじゃなくて、渡れないかなと思って」

…渡る?

「渡るって言っても…どうやって?」

ロープを繋げる…とか?

そんなに都合良くロープはないけど…。

「橋だよ、橋。箸を橋代わりにして、向こう側に渡ろう」

と、シルナは名案!みたいな顔をして、しょーもないことを言った。

…ごめんな。今俺、余裕ないからさ。

シルナの下らない洒落は、聞かなかったことにするよ。

「箸を、橋代わりに…。そんな長い箸、あるか?」

「さっき、棚の中に…ほら、あれ。あれなら届くんじゃないかな?」

シルナの指差す先には、細長い菜箸が置いてあった。

成程、菜箸か。

菜箸をこちら側から、橋代わりに渡せば…向こう側の食料庫に届くかもしれない。

やってみる価値はありそうだな。

問題は…。

「二人で運べるか…?この菜箸…」

人間サイズなら、指二本で軽く運べるけど。

今の俺達にとっては、巨大な丸太を転がすようなものだ。

「持ち運ぶ…のは無理だから、何とか向こうまで転がすしかないね…」

…相当な重労働になりそうだ。

…しかし、現状…これ以外に、現実的な方法はない。

となれば、やるしかないか。

「よし…物は試しだ。やってみよう」

今なら、厨房には誰もいない。

こっそり菜箸を動かしても、バレる心配はないだろう。

誰かが厨房に戻ってくる前に、早いところ動かさなくては。

巨大な丸太のような菜箸を、俺はシルナと共に、全力で転がした。

凄まじい重労働。

「シルナ、もっと本腰入れろ。ぎっくり腰にびびってる場合じゃないぞ」

「び、び、びびってないよ…!そ、それより…届きそう…!?」

「もうちょっと右…もうちょっと…。よし、そこだ」

食器棚から、菜箸が一本、突き出した形。

成程、箸が橋代わりになってる。

「微妙に…届いてないな」

「うん…さすがに遠いね…」

残念ながら、ここまでやっても…菜箸の橋は、向こう岸に届いていない。

…だが。

ここまでやったからこそ、この努力を無駄にはしない。

「…菜箸の先からジャンプすれば、届くんじゃないか?」

「えっ…!羽久、本気…?」

俺は至って本気だ。

「思いっきりダイブすれば、ギリギリ届くだろ」

「あ、危ないよ…!」

「危険なのは百も承知だ」

分かってるけど、でも他に方法なんてないだろ。

制限時間がある以上、時間を無駄にする訳にはいかない。

ここから食料庫に飛び移る機会を、悠長に待ってはいられない。

やれることがあるなら、何でもやってみるべきだ。

例え命の期限が迫っていようとも。

何もせず、制限時間が来るのを待っているよりはマシ。

「シルナは無理しなくて良い。ここで待っててくれ。俺が飛ぶよ」

ビビりチキンのシルナじゃ、腰が引けて動けまい。

俺が向こう側に渡って、食料庫の中を調べてこよう。

…と、思ったのだが。