神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「畜生…駄目か…」

「うーん…。なかなか見つからないね…」

ミニチュアサイズの身体で、俺達は食器棚の中を隅々まで探した。

鍋の中も見たし、フライパンの中も探したよ。

しかし、招待状は見つからなかった。

なんか、もうどっと疲れた。

ここまでやっても駄目なのか…。手厳しいぞ、『不思議の国のアリス』。

テーブルの上もない、食器棚の中もない、となると…。

「他に、この部屋で探せるところは…」

俺達は食器棚の中から、周囲をきょろきょろと見渡した。

…すると。

「シルナ、あそこ…」

「え?」

俺が指差したのは、食器棚の真正面にある、食糧品を入れた大きな食料庫。

「あの中、探してみるか?」

「そうだね…。ごちゃごちゃしてるみたいだし、招待状が紛れ込んでるかも」

まぁ、どのみち。

探せるところは、何処でも探さないといけないからな。

今度は、あっちの食料庫を探してみよう。

…問題は。

「どうやって、あっちまで移動するかだよな…」

当然ながら、自分達の足で移動するのは不可能だ。

食器棚までやって来たのだって、色んな奇跡が積み重なった結果だし。

またしても、危険な綱渡りをしなければならないようだ。

危険を承知で、メイドかコックにしがみついて、飛び移るか…?

落っこちたら死ぬな…。

招待状を見つけられなかったら、いずれにしても死ぬんだけどな。

…しかし。

いつの間にか、厨房の中から人が消えていた。

どうやら、俺とシルナが食器棚の中を探している間に。

お茶会の菓子、全部作り終えたらしい。

…やべぇ。誰もいねぇ…。

誰かにしがみついて、飛び移ろうと思ってたのに…人がいないんじゃ、それも出来ない。

見つかる危険性はなくなったが、しかし、人の手を借りなければ、俺達は食器棚の中から移動出来ない。

「どうする…?」

「…どうしよう…」

シルナと二人、途方に暮れるしかない。

…このままだと俺達、もしかして食器棚の中から動けないんじゃね?

もしかしなくても、非常に不味い事態である。

「何とか…下に降りれないか?」

「え?いや、それは無理だよ。…あれだよ?」

そう言って、シルナは足元を指差した。

見下ろすと、食器棚から床までの距離は、飛び降り自殺するには充分過ぎるほど。

ここから飛び降りたら、間違いなく死ぬ。

うっかり足を滑らせただけで、即死だ。

命綱もなしに、床に降りることは出来ない。

どうすれば…食器棚から降りて、真正面にある食料庫に飛び移れる…?

「何とか…方法を考えないと…」

「…あ、そうだ」

「ん?」

シルナが、何かを閃いたようにポンと手を叩いた。

「ちょっと思い付いたことがあるんだけど…試してみる?」

「この際、出来ることがあるなら何でも試した方が良いだろ」

「ちょっと…いや、かなり…危ないかもしれないけど…」

愚問だな。

この場にいる時点で、とっくに身の危険を感じてるよ。