神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

俺とシルナは白い糸にしがみついて、よじよじと上に登った。

途中で糸が切れたらどうしよう、と心配したが。

今の俺達は、テントウムシほどの体重しかない。

細い糸でも、充分持ち堪えられた。

「うぐぐ…死にそう…」

「ふわぁぁ…。怖い、下見たら物凄く怖いよぅ…」

言うな。下、見てしまいそうになるだろ。

あと、そろそろ腕が限界。

しかし、弱音を吐いている暇はない。

俺は疲れを無視して、ひたすら上に、上に登った。

…やがて。

「…!着いた…!」

テーブルクロスを手繰り寄せながら登り、何とかテーブルの上に辿り着いた。

…そして。

「…シルナ、大丈夫か?掴まれ」

「あ、ありがとう…」

シルナに手を差し伸べ、ぐいっと引っ張って、テーブルの上に辿り着く。

二人共、無事にテーブルの上に到着出来た。

はぁ、疲れた。

もう、ここがゴールってことで良いんじゃないか?

…そんなはずがないのだが。

テーブルの上には、様々な食器が置いてあった。

どうやらこの厨房、お茶会の準備をしているようだな。

さっきシルナが言ったチョコケーキやら、クッキーやらマフィンやら。

皿に乗っているのは、お菓子ばかりだ。

「ふわぁぁぁぁ…!夢だ、夢のようだ…!巨大チョコケーキ…!!」

「…」

シルナは目をキラキラと輝かせながら、チョコケーキの皿に飛びついた。

「自分の身体より大きなチョコに齧り付くって、私長年の夢だったの!」

「…あ、そ…亅

「そんな訳で、いただきまーす!」

シルナは、自分の身体より遥かに大きなチョコケーキに、思いっきり齧り付いていた。

「もぐもぐ。美味しい。もぐもぐもぐもぐ」

…一心不乱に食っとる。

これ、お茶会で出されるお菓子なんだろ?

それをお前、勝手に摘み食いするとは…。

あまりにも卑しくて、あまりにもみっともないのだが。

夢の巨大ケーキに、シルナは我を忘れていた。

シルナにとっては、思わぬ幸運だったようだな。

…それにしても。

「はふはふ。こっちはクッキー!こっちはチーズケーキだね!もぐもぐ。どれも美味しい!幸せ!夢のようだ〜!!」

「…」

…こいつ、もう放っておいて、俺一人で招待状探してこようかな。

万が一招待状が見つからず、この空間に閉じ込められるようなことになっても。

シルナにとっては、案外悪くないのかもしれない。

「うま〜!!」

「…良かったな…」

もう怒る気にもならないよ。あまりにも幸せそうで。