成程、ネズミが出入りする穴がある訳だよ。
ここは、食べ物を調理する場所なんだ。
カチャカチャいう音は、食器同士が擦れ合う音だったようだ。
厨房の中には、さっき俺達を踏み潰しかけたシェフの他にも。
コックコートを着た何人かの料理人と、それを補佐しているらしい、メイド服姿の女性がいて。
いずれも二足歩行で人間の姿なのに、首から上はネズミだった。
皿を運んだり食材を運んだりと、厨房の中を忙しそうに働いている。
…実に慌ただしい厨房だ。
皆忙しないなぁ…。これじゃあ、下手に動くと、またしてもプチッと踏み潰されかねない。
踏み潰されなかったとしても、俺達の存在に気づかれたら厄介だな。
だって、厨房に虫が彷徨いてるんだぞ?
料理に入ったら大変とばかりに、摘み出されそう。
充分に注意して進まなければ。
それにしても、食材やら食器やら、様々なものに囲まれた厨房の中で。
人目につかず、かつ踏み潰されないように進むのは至難の業だぞ。
どうしたものか…と、俺は頭を悩ませていたが。
「くんくん。あぁ、良い匂い…。これはチョコレートの匂いだね。くんくん。チョコケーキの匂いだな」
…馬鹿シルナは、呑気にチョコレートの匂いを堪能していた。
…何やってんだお前。
そんなに余裕なら、お前一人で探してくれないか。
つーか、見た訳でもないのに、匂いだけでチョコケーキが分かるのか?
チョコレートに関しては、警察犬顔負けの嗅覚を見せるシルナである。
「真面目に探す気がないなら、さっきのネズミ穴に押し込むぞ」
「さ、探す、探すよ。分かってるよ」
本当かよ。
「気をつけて進むぞ。うっかりバレたら大変だし、それに踏み潰されたらひとたまりもない」
「う、うん…」
俺とシルナは、出来るだけ壁際に沿って歩き始めた。
こんなこそこそと、人目を忍んで歩く羽目になるとは。
なんか悪いことでもした気分だな。
「…しかし、探すって言っても…何処を探せば良いんだ…?」
都合良く、招待状が床に転がっている訳もなし。
「台所に物を隠すとしたら…やっぱり、食器棚の中?…鍋の中とか?」
このサイズで食器棚に潜り込み、鍋の中を探れと?
危険極まりない旅だな。
だが…このまま床を歩いていても、踏み潰される危険があるだけで、何も見つけられなさそうだ。
何とかして、まずは調理台の上に登りたい。
「ここに、テーブルはあるけど…」
出来上がった料理を置いておく為のテーブルである。
とりあえずここに登れば、随分視界が広がるはずだが。
問題は、どうやって登るかだ。
まさか、テーブルの脚に捕まってよじ登る訳にもいかず…。
…すると。
「…!羽久、あれ見て」
シルナが、何かに気づいた。
シルナの指差す先には、一本の糸が床に垂らされていた。
テーブルクロスの一部が、解けてしまっているのだ。
ひょろひょろとした糸でも、今の俺達には、命綱のロープも同然。
ここから登りなさいと言わんばかりの、アリスの気遣いを感じる。
その親切心には、素直に感謝するけども。
だからって、簡単に登れる代物ではないぞ。
今の俺達にとっては、床からテーブルまでの距離は、標高何千メートルの巨大な山のように長い。
途中で力尽きたら、固い床に真っ逆さまだ。
まさに、命懸けの登山になりそうだ。
…しかし。
「…仕方ない、行くか」
他に選択肢がないなら、前に進むしかないだろう。
…前にって言うか、上なんだけど。
ここは、食べ物を調理する場所なんだ。
カチャカチャいう音は、食器同士が擦れ合う音だったようだ。
厨房の中には、さっき俺達を踏み潰しかけたシェフの他にも。
コックコートを着た何人かの料理人と、それを補佐しているらしい、メイド服姿の女性がいて。
いずれも二足歩行で人間の姿なのに、首から上はネズミだった。
皿を運んだり食材を運んだりと、厨房の中を忙しそうに働いている。
…実に慌ただしい厨房だ。
皆忙しないなぁ…。これじゃあ、下手に動くと、またしてもプチッと踏み潰されかねない。
踏み潰されなかったとしても、俺達の存在に気づかれたら厄介だな。
だって、厨房に虫が彷徨いてるんだぞ?
料理に入ったら大変とばかりに、摘み出されそう。
充分に注意して進まなければ。
それにしても、食材やら食器やら、様々なものに囲まれた厨房の中で。
人目につかず、かつ踏み潰されないように進むのは至難の業だぞ。
どうしたものか…と、俺は頭を悩ませていたが。
「くんくん。あぁ、良い匂い…。これはチョコレートの匂いだね。くんくん。チョコケーキの匂いだな」
…馬鹿シルナは、呑気にチョコレートの匂いを堪能していた。
…何やってんだお前。
そんなに余裕なら、お前一人で探してくれないか。
つーか、見た訳でもないのに、匂いだけでチョコケーキが分かるのか?
チョコレートに関しては、警察犬顔負けの嗅覚を見せるシルナである。
「真面目に探す気がないなら、さっきのネズミ穴に押し込むぞ」
「さ、探す、探すよ。分かってるよ」
本当かよ。
「気をつけて進むぞ。うっかりバレたら大変だし、それに踏み潰されたらひとたまりもない」
「う、うん…」
俺とシルナは、出来るだけ壁際に沿って歩き始めた。
こんなこそこそと、人目を忍んで歩く羽目になるとは。
なんか悪いことでもした気分だな。
「…しかし、探すって言っても…何処を探せば良いんだ…?」
都合良く、招待状が床に転がっている訳もなし。
「台所に物を隠すとしたら…やっぱり、食器棚の中?…鍋の中とか?」
このサイズで食器棚に潜り込み、鍋の中を探れと?
危険極まりない旅だな。
だが…このまま床を歩いていても、踏み潰される危険があるだけで、何も見つけられなさそうだ。
何とかして、まずは調理台の上に登りたい。
「ここに、テーブルはあるけど…」
出来上がった料理を置いておく為のテーブルである。
とりあえずここに登れば、随分視界が広がるはずだが。
問題は、どうやって登るかだ。
まさか、テーブルの脚に捕まってよじ登る訳にもいかず…。
…すると。
「…!羽久、あれ見て」
シルナが、何かに気づいた。
シルナの指差す先には、一本の糸が床に垂らされていた。
テーブルクロスの一部が、解けてしまっているのだ。
ひょろひょろとした糸でも、今の俺達には、命綱のロープも同然。
ここから登りなさいと言わんばかりの、アリスの気遣いを感じる。
その親切心には、素直に感謝するけども。
だからって、簡単に登れる代物ではないぞ。
今の俺達にとっては、床からテーブルまでの距離は、標高何千メートルの巨大な山のように長い。
途中で力尽きたら、固い床に真っ逆さまだ。
まさに、命懸けの登山になりそうだ。
…しかし。
「…仕方ない、行くか」
他に選択肢がないなら、前に進むしかないだろう。
…前にって言うか、上なんだけど。


