…悲報。

俺とシルナが、縮んだ。

多分、通常の人間視点だったら、目を凝らさないと見えないほど縮んでる。

テントウムシとか、アリンコのサイズ。

足の小指の爪くらいか?

…ちっちゃ…。

やべぇよ。もう、色んなことがやべぇ。

「どうすんだよ…これ…」

今の俺達にとっては、例えテントウムシが相手でも、巨大な怪獣が襲ってきたように見えるだろう。

「わー。ちっちゃーい。何もかもが大きく見えるね〜」

…シルナの奴、何でちょっと楽しそうなんだ?

状況分かってるか?

それとも、まだ「とびきりのお菓子」とやらで、頭の中お花畑になってるのか?

「お前、何ふざけてるんだ?状況を理解してるのか?」

「い、いや…。わ、分かってる。分かってるよ。そ、そんな怒らないで」

怒るわ。

時間もない、余裕もない、それどころかこんな変わり果てた姿にさせられて。

とてもじゃないが、落ち着いていられない。

「今、誰かに…何かに襲われたら、俺達は為す術もないんだぞ」

さっきも言った通り、テントウムシに襲われても死活問題だからな?

人間だろうが、昆虫だろうが、それ以外の動物だろうが。

足の裏でプチッと潰されて、それでおしまいだ。

生憎俺はシルナと違って、昆虫視点に慣れてないからな。

心の余裕なんて、あるはずがない。

「そ、それはそうだけど…」

「悠長してる場合か?こんなサイズじゃ、何をやろうにも満足に…」

…あ、そうだ。

俺はふと思いついて、ポケットに手を突っ込んだ。

そこには、ちゃんと愛用の杖が入っていた。

杖も俺と同じように、ミニチュアサイズに縮んでしまったらしい。

元々小さくて細い杖なのに、更にこんなに小さくなってしまって…。

人間視点だと多分、この杖…産毛ほどの大きさもないんだろうな。

何もかもが、びっくりするほど縮んでしまった。

あの青い液体のせいで…。

飲む以外の選択肢がなかったとはいえ…。ある意味で、やっぱり毒だったな。

他の皆も、こんな目に遭わされているのだろうか…?

…それはともかく、今は杖だ。

俺は杖を振って、得意の時魔法を発動させた。

「…」

…一応、魔法は使えるようだ。

ただし…魔法の威力はゴミカスだな。

無理もない。

身体が縮んでるんだから、魔法の威力もその分弱くなるのは当たり前。

…なんて貧弱な魔法だ…。泣きたくなる…。

これが、イーニシュフェルト魔導学院で教師を務める者の魔法かよ。

とてもじゃないが、ルーデュニア聖王国の皆様に、こんな情けない姿はお見せ出来ないな。