「…分かってると思うが」

それぞれ、別々の世界に送られる前に。

どうしても…確認しておかなければならないことがある。

言うまでもないことかもしれないけど。

「七人、一人も欠けずに…もう一度会おう」

アリスのお茶会の席に、この場にいる全員が揃っていることを。

俺は信じているからな。

…すると。

「愚問ですね。私は、こんなところでくたばるつもりはありません」

「うん…。絶対にまた、皆で再会しよう」

「僕は『八千歳』と一緒だから、心配しなくても大丈夫だよ」

「俺も『八千代』と一緒だからねー。まー、大丈夫でしょ」

イレースと天音、令月とすぐりが言った。

頼もしい奴ら…。

…だったが。

「…僕は、これを機にワンチャン死ねないかなーとか期待してますが…」

ナジュ、お前。

雰囲気を台無しにしやがった。

「アホ言ってないで、ちゃんと戻ってこい。ここで死んでも、あの世には行けないぞ」

幽霊になって、永遠に閉じた世界の中を彷徨う羽目になるのだ。

それはお前の望むことではないだろう。

二度とリリスに会えないんだぞ。分かってるか?

「分かりましたよ。帰ってきますよ」

「よし…それで良い」

帰ってくるって言ったんだからな。ちゃんと有言実行しろよ。

…そして。

「とびきりのお菓子があっても、美味しいチョコレートティーがあっても、どんなに素敵なお茶会でも…皆が揃ってなきゃ、意味がないからね」

と、シルナが言った。

お前は、まだとびきりのお菓子とやらを忘れられないのか。

「皆で一緒に、元の世界に帰ろう。そして…アリスのお茶会じゃなくて、シルナのお茶会を再開しよう」

大事なのはそこか。

まぁ…そうだな。訳の分からんアリスの茶会よりも。

シルナの、鼻が捩れそうなチョコレートティーパーティーの方が、遥かにマシというものだ。

…そんな訳だから。

絶対また、皆に再会する。

そして、皆で帰って、シルナのティーパーティーを再開するのだ。

イレースの言う通り…こんなところでくたばってたまるものか。

絶対生きて帰ってやる。

だから、それまでは。

「…各自、武運を祈る。絶対戻ってくるんだぞ」

しばしのお別れだ。




「さぁ、皆さん。行ってらっしゃい」

ハンプティ・ダンプティの手引きで。

俺達は、再び青い光りに包まれ。

それぞれ、自分の持つトランプの絵柄の世界に転送された。