…俺が選んだトランプは、クローバーの6。

そして、このトランプに描かれている絵柄。

「ティーセット…か?これ…」

洒落たティーカップと、ティーポットの絵柄だった。

やたらメルヘンな絵だが…。

しかし『不思議の国のアリス』と言えば…ティーセットは定番アイテムだよな。

まぁ、登場人物ではないけども…。

そこはあれだよ。多分、大人の事情的な何かが働いて…。

「…!羽久、羽久も6なの?」

と、シルナが声をあげた。

ん?

羽久「も」…ってことは…まさか。

「シルナも6なのか?」

「うん…!ほら、ハートの6」

…なんと。

誰かと一緒だったら良いと思っていたら、本当に一緒だった。

途端に、心の中に安堵感が広がった。

一人じゃないことの有り難さよ。

俄然、何とかなりそうになってきた…って、『シンデレラ』のときも思ったな。

俺は自分で思ってるよりも、寂しがり屋なのかもしれない。

…ま、そりゃそうか。

俺がと言うより、「前の」俺が…。

…いや、今はそんなことはどうでも良いな。

「俺とシルナが6…。他の皆は…」

もしかしたら、他にも数字が被っているメンバーがいるかもしれない。

すると。

「あれ。『八千代』も7なの?俺も7だよ」

「本当だ。被ったね」

なんという奇跡。

令月とすぐりの二人も、同じ7のトランプを手にしていた。

お前達、こんなときでも以心伝心か。

素晴らしい友情パワーを、遺憾なく発揮していく。

これは良い調子だ。

一人で探すより、二人三人で手分けして探す方が、絶対効率が良いに決まっている。

ランダムで決まる数字だが、二組も数字が被っているとは。有り難い。

運命の女神様に感謝だ。

…と思ったけど、もし本当に運命の女神様がいるなら、そもそもこんな世界に俺達を連れてこないでくれ。

もしかしたら、他の三人も数字が被っている者がいるかもしれない。

「イレース。ナジュ、天音。お前達は?」

期待を込めて、三人に尋ねる。

…しかし。

「私は3ですね」

「僕は…クイーンだ。12」

「僕は2ですね」

運命の女神様は、それほど優しくはなかった。

偶然は長続きしない。

三人共、バラバラの数字だ。

そうか…。駄目だったか…。

ってことは、イレース、ナジュ、天音の三人は…それぞれ、一人で招待状探さないといけないんだな。

そりゃそうか…。俺とシルナ、令月とすぐりの数字が被ったのも、非常に幸運な偶然だったのだ。

トランプの数字は、1から13まであるのだから。

期待値的には、全員バラバラの数字でもおかしくなかった。

それでも、二組も被っていたことに感謝するべきだろう。

「さぁ、皆さん、それぞれ自分の運命を決めるカードは選びましたね?」

と、ハンプティ・ダンプティが言った。

…あぁ、選んだよ。

「ちなみに、チェンジは効かないんだよな?」

「勿論。トランプを引くチャンスは一度きりですよ」

だよなぁ。

もし引き直しが通用するなら、イレース達にもう一回引いてもらって、被りを期待出来たんだが…。

まぁ、それをやり出したら切りがないからな。

…仕方ない。

直感で引いたこの数字に従って、招待状を探しに行くしかないらしい。