神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

――――――。





「…う…」

眩しさに目を細めながら、手探りで周囲を見渡す。

…どうなってるんだ、今…。

ここは…。

「…え…!?」

ようやく青い光が消え、周囲の状況が鮮明に見えるようになった。

そして俺は、自分のいる場所に驚愕した。

…何だ、これ。

さっきまで俺、室内にいたはずだよな?

それなのに上を見上げると、青い空が広がっていた。

いつの間に外に出てきたんだ?

更に、チョコ菓子でいっぱいのテーブルも何処へやら。

見慣れた学院長室の景色とは程遠い。

俺は、全く別の空間にいた。

…すると。

「羽久…!気がついた?」

「…!シルナ…」

シルナに呼ばれて、俺はハッとして振り向いた。

…シルナだ。

突如として、摩訶不思議な状況に追い込まれてもなお。

シルナの顔を見ると、何とかなりそうな気がしてくる。

とにかく、一人ではないのは確かだ。

…そして、この場にいるのは俺とシルナだけではなかった。

「…またしても厄介事に巻き込まれたようですね。…はぁ…これだから、学院長の茶会など参加したくなかったんです」

うんざりとして、溜め息を溢すイレースと。

「何だか、今回はまたいつにも増して、メルヘンな雰囲気ですね」

「青い薔薇…かと思ったけど、これ…ペンキで塗ってるのか…」

ナジュと天音の二人。

そして。

「ツキナが見たら、喜びそーな景色だなー」

「これは何の物語なんだろうね」

すぐりと令月の二人も、この場にいた。

良かった。

結局、いつものメンバーは揃ってるってことだな。

例えどんな状況にあろうと、このメンバーが揃っていれば、大抵のことなら何とかなりそうな気がする。

多分大丈夫だ。多分だけど。

…それで?

「何処なんだ…ここは…」

見渡す限り、メルヘンな景色が広がっている。

青空の下、たくさんの木々が生い茂り、青いペンキで塗った薔薇が咲き乱れている。

目の前には、洒落た薔薇のアーチまで。

青い薔薇っていうのが、何だか不気味に感じてしまう。

赤じゃないのか…。

しかし、ペンキで塗った薔薇とは…。

何だか何処かで聞いたことがある…ような、ないような…。

そもそも、俺達は何でこんなところにいるんだ?

この世界は何だ。

「シルナ。ここは一体…」

「…うん。これは多分、童話シリーズの…」

と、シルナが言いかけたそのとき。



「ようこそ、『不思議の国のアリス』の世界へ!」



不意に聞こえたその声に、俺は思わず、心臓が縮み上がりそうになった。