神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「…シルナ。ホウキが大人しいうちに聞くぞ。…今、何を言いかけた?」

俺はシルナに振り返って尋ねた。

今何か言いかけてたよな。

記憶が正しければ、何だって?

この『眠れる森の魔女』に関する情報だろう?

「…」

シルナは答えず、難しい顔をしていた。

…どうやら、あまり楽しいニュースではないようだな。

無理矢理聞き出すのは気が引けるが…。

「…話してあげてくださいよ。隠しておいたって仕方ないでしょう」

天音に回復魔法をかけられているナジュが、そう言った。

ナジュのことだから、シルナが何を言い淀んでいるのか、既にシルナの心を読んで把握しているのだろう。

「あなたが言わないなら、僕が言いますよ」

「…ナジュ君…」

…更に。

「何を遠慮しているんです。迷惑なら、もう充分かけられています。今更一つや二つ増えたところで同じでしょう」

「…イレースちゃん…」

…全くだな。

言い方はアレだが、皆イレースと同じ気持ちだよ。

ここまで一蓮托生で、ずっと協力してやってきたんだ。

今更、遠慮なんてしてくれるな。

特に俺は。

シルナが抱えているものは、半分背負う義務がある。

だから何でも言ってくれ。

「…大丈夫だ、シルナ。ここにいるのは全員お前の味方だ」

「…羽久…」

「遠慮せずに言ってくれ」

大抵のことなら、もう覚悟は出来てるよ。

伊達に、連日この童話シリーズに悩まされてきた訳じゃない。

「…ありがとう、皆」

シルナは初めて、少しだけ安堵の笑みを見せた。

そう、それで良い。

そして、シルナは先程言い淀んだことを話し始めた。

「…イレースちゃん、すぐり君。君達の魔法がいかに強力だろうと…このホウキを灰にすることも、溶かすことも出来ないと思う」

と、シルナは言った。

「何故です?」

「俺の毒魔法、疑ってる?」

「疑ってなんかないよ。正直、君の毒魔法は…まともに相手したくない代物だ」

同感。

「でも、そうじゃないんだ…。魔法がいかに強力でも…。それだけじゃどうにもならない。この『眠れる森の魔女』は…一度発動したら、恐らく二度と封印することは出来ない」

…シルナがここまで躊躇うのだから、余程言いにくいことなんだろうとは思っていたが。

…これはまた、予想以上の爆弾だったな。