神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

『眠れる森の魔女』が、真っ先に狙ったのは。

「ナジュ!」

「ぐぇっ…。折角治したばっかりなのに、また…」

『眠れる森の魔女』は、ナジュの土手っ腹を再び貫通。

お前もお前で、避けろよ。

「な、ナジュ君しっかりして!」

「いえ、僕は良いんで…。天音さんは避けてください」

「何言ってるの、すぐ治療を…」

どんな非常事態だろうと、怪我人を見ると放っておけない天音。

慌ててナジュに駆け寄ろうとしたところに、『眠れる森の魔女』はナジュにとどめを刺そうと、再度狙いを定める。

こいつ、ナジュを狙い撃ちにしやがって。

一番簡単に倒せそうだ、とでも思ったか?

ふざけんなよ。そうはさせるものか。

弾丸の速度で突っ込んできたホウキだったが、しかし、今度はナジュを貫くことは出来なかった。

真っ直ぐに突っ込んでくるホウキの前に、令月が立った。

無謀だ、と言おうとしたが、しかしその必要はなかった。

「…ワンパターンだよね、君の攻撃」

学生寮まで取りに行ってきた、令月愛用の小太刀が。

突進してくるホウキの柄を、真正面から受け止めた。

更に、そこに。

「いい加減、大人しくしてくれないかなー」

すぐりの糸が、ホウキにぐるぐると絡みついた。

ホウキ全体を包む繭のようだ。

…でも…。

「さっき、すぐりの糸を引き千切ってなかったか?」

「分かってるよ。今度は、さっきよりずっと硬い糸だから」

…そうなのか。

更に、すぐりのホウキ対策はそれだけではなかった。

「それと、糸に毒を染み込ませておいた」

…毒?

「毒って…何の毒を?」 

「あらゆる物質をどろどろに溶かす毒。ホウキだろうが、人間だろうが、金属だろうが、5分も経てば跡形もなくなる」

…末恐ろしい。

何が怖いって、そんな毒がこの世に存在していることじゃなくて。

そんな恐ろしい毒を、平然と作れてしまうすぐりが怖い。

『アメノミコト』仕込みの毒魔法、恐るべし。

「あの毒は強力だよ。僕には作れない。特に優れた毒魔法の使い手じゃなきゃ」

と、令月が補足してくれた。

マジかよ。

つくづく、すぐりが味方に回ってくれて良かった。

どろどろに溶かされてるホウキが、ちょっと気の毒になってきた。

…が。

「…まだ、安心出来ないよな」

二度あることは、三度あるだろう。

すぐりの拘束を解き、俺の時魔法も自力で突破し、シルナの封印さえ解除した魔法道具だ。

恐ろしいすぐりの毒さえ、物ともしない可能生がある。

『眠れる森の魔女』とやら。

タフさで言えば、これまでの魔法道具とは一線を画しているようだな。