神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

ナジュの身体の修復が終わり。

一応、ホウキが勝手に動き出さないことを確認した後。

俺達は、ぴたりと静止したホウキを持って、学院長室に移動した。

またしてもホウキが暴走しては困るので、シルナが仮の封印を施した。

これで、ひとまずは安心だと思う。

でも、まだ油断は出来ない。

何せこのホウキは、普通のホウキではない。

ナジュの土手っ腹を貫いた、殺人ホウキなのだから。

殺人ホウキって何だよ。

「…で、シルナ。これは何なんだ?」

前置きなしに、俺はシルナにそう尋ねた。

シルナなら何か知ってるかと思って。

「暴走するホウキなんて、聞いたことがないぞ」

実際この目で見なければ、信じられなかっただろうな。

普通信じないだろう。「ホウキが暴走して…」なんて。

「何か心当たりはないのか?」

「…心当たり…なくはない、ね」

シルナは表情を曇らせて答えた。

…そうか。

やっぱり、そうか。

嫌な予感、外れてくれれば良いと思ってたんだが…。

「多分これは…童話シリーズの一つじゃないかと思う」

…やはりな。

嫌な予感ほど、よく当たるってね。

ま、そんなことだろうと思ってたよ。

「童話の名前にかこつけて、暴走するホウキを作るなんて…イーニシュフェルトの里の人って、発想が野蛮過ぎません?」

「折角技術と知識に優れている癖に、ろくなものを作らないんですから、全く救い難いですね」

ナジュとイレースは、非常に辛辣だった。

ま、まぁ…言葉は悪いけども、言いたいことは分かる。

正直、俺も同感だよ。

しかもこれ、子供の玩具なんだろ?

こんな玩具で育てられた子供の性格が、歪んでしまわないか心配だよ。

シルナは比較的まともに育ったようで、何より。

「学院長先生。このホウキは何という名前の魔法道具なんですか?」

「これは…恐らく『眠れる森の魔女』だね」

天音の問いに、シルナが答えた。

…ん?

なんか、聞き覚えがあるような…ないような…。

眠れる森の…。

「…美女じゃねぇの?」

「魔女だよ」

魔女なのかよ。

原作改編…?

「これは魔女のホウキだから。美女じゃなくて、魔女なんだ」

「…そんなのもあるのか…」

何だか、こじつけのような気がしなくもないが。

イーニシュフェルトの里の人間は、何考えてるか分からないからな。

シルナほど単純じゃないんだ。同じ里の出身なのに、おかしな話だよな。

ともあれ、彼らなら…このような魔法道具を作ることも不思議ではない。