「ミミズを食うな。これは食べ物じゃない」

「そんなことないよ。茹でて干して、塩かけて食べたら美味しいよ?」

何の食リポだよ?

とにかく、気持ち悪いからやめろ。

…ん?

そういえばベリクリーデの奴、さっき。

「余ったら」って言ってたよな?

ってことは、別の用途にこのミミズを使う予定がある、ということか?

「…お前、これ…何に使うんだ?」

「エサ」

エサ?

「このミミズ持って、魚釣りに行くんだよ。折角なら新鮮なエサの方が、お魚も食い付くかなぁって思って」

という、ベリクリーデの説明でようやく状況を理解した。

成程、魚釣りな?

確かに、魚釣りには生き餌の方が良いだろう。

ミミズをエサに魚釣りって、まぁまぁ定番だもんな。

その為に、わざわざ雨に濡れながらミミズを集めてたんだな。

成程、よく分かりました。

分かったけど、同意はしないぞ。

ミミズが欲しかったのは分かるが、花壇に入るんじゃない。

「あ、こっちにもいた。にょろ〜」

「おい、こら」

小石を持ち上げ、その下にいたミミズを、ベリクリーデは泥まみれの手で鷲掴み。

ぽいっとバケツに放り込んで、ご満悦の様子である。

…やれやれだよ、全く。

「よし、もうこれくらいで良いかな」

「…あぁ…。いい加減、隊舎の中に入れ。お前びしょ濡れだぞ」

一回、シャワー浴びてきた方が良いんじゃね?

「でも、この後魚釣りに行くんだもん」

「魚釣りって、お前…。…何を釣るんだよ?」

「マグロ」

そりゃ大きく出たな。

「あと、大トロを釣るんだー」

大トロはマグロだ。

「それから…ジュリスは何のお魚が好き?」

「は?」

「ジュリスが好きなお魚、釣る」

…。

「強いて言うなら…フグかな。フグ刺しとか…」

「じゃあ、それ釣る」

「やめとけ」

あれ毒あるからな。毒。

フグ毒は洒落にならないから、不用意に触るんじゃない。

あと、例え釣ったとしても、免許がないと捌けないぞ。

…それよりも。

「お前、釣りって…何でまたいきなり、そんなことに興味を持ったんだよ?」

何となく察しているが、一応尋ねてみた。

すると。

「本を読んだんだ」

…成程。やはりか。

ベリクリーデに余計な入れ知恵をしたのは、間違いなく…。

「『猿でも分かる!初心者の魚釣り』みたいなタイトルの本だな?」

「凄い。ジュリス、何で分かるの?ジュリスも読んだことあるの?」

「ないけど、そんなことだろうと思ったんだよ」

いつものパターンだからな。

お前、あのシリーズ読むのやめろって、何回も言ってるだろ。

何処から本を調達してくるんだ。

…で、ベリクリーデは、何処かから持ってきた魚釣りの本を見つけて。

その本に触発されて、ミミズを生き餌に、魚釣りを始める気になったんだな?

好奇心旺盛で、そこはベリクリーデの長所だと思うんだが。

何でも見切り発車で始めるのは、大きな欠点でもある。