いざ、現場に急行。

するとそこには、先程俺の部下が言っていた通り。

「…あ、いた。よいしょっと…」

傘もささずに、レインコートも着ずに。

雨に打たれながら、ベリクリーデは花壇に土足で入り、しゃがみ込んでいた。

そして、土の中に指を突っ込み、ぐりぐりと掘り返していた。

…あいつ、ほんっと…ほんっと、何やってんの?

大抵の奇行には慣れたつもりだったが、今日はまた、一段と…。

…ともあれ。

「…こら!ベリクリーデ!!」

「わっ、びっくりした」

背後から俺が呼び止めると、ベリクリーデはびくっとして。

手に持っていた何かが、にょろっと花壇に落ちた。

…今、何が落ちた?

花びらか?

まさかこいつ、花を踏み荒らしてるんじゃないだろうな?

許されざる行為。

「お前、何やってんだ」

「あ、ジュリスだ」

ジュリスだ、じゃねぇんだよ。質問に答えろ。

「お前、花を荒らしてるんじゃないだろうな。ここの花は、聖魔騎士団に出入りしてる庭師達が手入れしてくれてる花壇なんだぞ。勝手に踏み荒らして良いと思ってるのか?」

もしそうなら、さすがの俺も怒るぞ。

…しかし。

「?花?」

きょとん、と首を傾げるベリクリーデ。

…いや、花だろ?

お前の目の前にあるじゃん。

「大体お前、何やっ…うわっ!?」

「うわ?大丈夫?」

大丈夫じゃなかったよ。

ベリクリーデの足元にあるものを見て、俺は思わず、驚きの声をあげてしまった。

ベリクリーデは、足元にバケツを置いていた。

殊勝に草取りでもしてるのか、と思うだろう?

そうではない。

ベリクリーデのバケツに入ってのは、抜いた草でも、花びらでもなく。

…うにょうにょとひしめく、大量の…。

…ミミズだった。

…何でミミズ…?

ベリクリーデが花壇に入っていた理由が、これではっきりした。

ベリクリーデは何も、花を荒らすつもりなどない。

ただ、ミミズを収穫していただけだったのだ。

「お前…何で…ミミズ集めてんの?」

…は、まさか。

「食べる…とは言わないよな…!?」

「?余ったら、茹でて食べようと思ってたんだけど」

おぇぇぇぇ。

食事中の人、心から申し訳ない。

ベリクリーデ責任持って俺が止めるから、許して欲しい。