「世界と共に消滅、ですか…。なかなか面白いですね。上手く行けば、僕死ねるのでは?」

消滅と聞いて、わくわくしてるのはナジュくらいだ。

お前な。

お前は死ねて喜ぶのかもしれないが、巻き添えで俺達まで死ぬんだぞ。

しかし、世の中はそんなに甘くはなかった。

「いや…消えるって言っても肉体が死ぬだけで、魂は永遠に、異空間を彷徨うことになる」

「え?じゃあ嫌です」

手のひら返しが早い。

そりゃそうだろう。

魂だけの存在になって永遠に彷徨うなんて、最悪じゃないかよ。

普通に死ぬより嫌だろ。

何が何でも、制限時間までにガラスの靴を見つけなくては。

異空間を彷徨う幽霊になるなんて、絶対に御免だ。

「…こんなところで、うだうだ話をしている暇はないようですね」

イレースは、くるりと踵を返した。

「すぐに、捜索に取り掛かりましょう。このメンツで幽霊と化すなんて、死んでも御免です」

「…」

「では、私はまず、稽古場の方を見てきます」

「…分かった」

俺も、このメンツ…じゃなくても、幽霊になるのは嫌だね。

こうなったら、とにかく虱潰しに探すしかない。

「皆、手分けして…ガラスの靴を探そう。制限時間までに、急いで」

「…あぁ」

自分だけの命じゃない。仲間の命も懸かっている。

今ばかりは、悠長なことをしている暇はないようだ。