「…!…使えない…」

すぐりの言う、世界に拒まれてる、の意味が分かった。

本当に、世界に拒まれているかのようだ。

言葉を発しようとしているのに、無理矢理口を塞がれるような気分。

発動の直前に、魔力に蓋をされてしまっているようだ。

抗って、無理矢理発動させられない…こともないのかもしれないが。

残念ながら、今はそれも出来なさそうだ。

…一体、どういうことだ?

俺達にとって、有利に働く…便利な魔法が、軒並み使えない。

一方で、今この状況で、特に役に立ちそうもない魔法はいつも通り使える。

これじゃあ、まるで…。

「どうやら、使える魔法を制限されているようですね。『シンデレラ』の課すルールを捻じ曲げるような魔法は、使えないことになってるんでしょう」

イレースはそう結論づけた。

…そのようだ。

あくまで、自分達の足で走り回って、自分達の目で見つけろと。

そういうことなんだろう。

…ったく…魔導師である利点を、全く活かせないとはな。

本当にこれ、イーニシュフェルトの里で作られた魔法道具なのかよ?

つくづく思うが、こんな玩具で遊ばせるんじゃねぇよ。

教育に悪いと思う。

「…じゃ、自力で探すしかないってことですね」

「うわー。不便だな〜」

「僕は元々、力魔法しか使えないから、いつも通りだけどね」

令月だけだな。魔法を制限されたことによって、何の被害も被らないのは。

「…あの、学院長先生。一つ確認しておきたいんですけど」

天音が挙手をして、シルナに尋ねた。

「…何かな?」

「深夜12時までに…って言ってましたけど、もし制限時間までにガラスの靴が見つからなかったら…そのときは、どうなるんですか?」

…良い質問だ。

…そして、嫌な質問だ。

何だかろくでもない予感がするから、出来れば聞きたくなかったのだが。

でも、聞かずにおくのも、それはそれで怖いだろう。

制限時間に間に合わなかったら、どうなるんだ?

シルナの硬い表情を見るに、良いことは起きなさそうだな。

「もし、日付が変わるまでにガラスの靴が見つからなかったら…。…『シンデレラ』魔法は解け、世界は消えてしまう」

「…つまり、どうなるんだ?」

「私達は、この世界に閉じ込められたまま…ガラスの靴と一緒に、消滅してしまうことになる」

…。

…ほらな、言ったろ?ろくでもないことになるってさ。

シルナが珍しく、やけに焦ってる訳だよ。

やっぱり、聞かなきゃ良かった。