神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

…急いで、こそこそと自分の執務室に逃げ帰ってきて。

改めて、考えてみる。

…人様宛てのラブレターを、本人が封を開ける前にこっそり持ち帰るなんて。

私、相当酷いことをしてますよね?

人魚姫さんの気持ちを、踏みにじるような真似を…。

でも…人魚姫さんがアトラスさんに言い寄るのは、私としては面白くないし…。

…あぁ、自己嫌悪。

自己嫌悪に陥りながらも、私は持ち出してきた手紙を、ポケットから取り出した。

私はその手紙を、じーっと見つめた。

…まさか、これ…。

…読んだら駄目ですよね?勿論。

私ったら、何を考えているんでしょう。

他人宛ての手紙を、本人の許可無く勝手に開けて読もうだなんて。

最低な行為ですよ。

馬鹿なことを考えるのはよそうと、頭を軽く振ってみる。

…しかし。

「…」

私は挑戦的なピンク色の封筒と、その封筒に貼られたハートのシールから目が離せなかった。

…何が書いてあるんでしょうね、これ。

アトラスさんへの思慕の情を、つらつらと書き連ねているのでしょうか。

…そう思うと、何だかむずむずしますね。

そんな調子で、15分くらい手紙を見つめながら、あれこれと葛藤した…その結果。

私は机の引き出しを開けて、メールオープナーを取り出していた。

ごめんなさい、人魚姫さん。

本当にごめんなさい。

でも私、どうしても…あなたがアトラスさんに何を伝えようとしているのか、気になるんです。

あぁ神様、私を許してください。

罪悪感はあったが、それ以上に興味の方が勝った。

私は封筒を開けて、その中から便箋を取り出した。

封筒とお揃いの便箋は、薄いピンク色だった。

そこに、女性らしい可愛らしい文字で、人魚姫さんの思いの丈が綴られていた。

うぅ。人の手紙を勝手に読む罪悪感。

それでも私は、人魚姫さんの思いの丈を、貪るように読み始めた。