神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「そういえばシュニィ、ここ最近、ちょくちょく様子を見に来るよな」

…ぎくっ。

「無論、シュニィに会えるのはいつでも嬉しいが…。何かあったのか?」

「い…いえ、何も…」

アトラスさんらしからぬ、この鋭さ。

たまに発揮するのやめて欲しいです。

「そうか…。何かあれば、何でも相談してくれ」

「あ…ありがとうございます」

その気持ちは…嬉しいのですけど。

とてもじゃないけどこんなこと、あなた本人に相談出来ません。

「あ、あの…。私、そろそろ戻ります」

「もう戻るのか?」

「は、はい…。午後の任務があるので…」

嘘である。

本当は、今日はもう任務なんてない。ひたすら執務室に籠もって、ひたすら書類仕事だ。

「何の任務だ?手伝おうか?俺は午後から暇なんだ」

「い、いえ、大丈夫です。その…私一人で、充分事足りますから」

「…そうか…」

ちょっと残念そうなアトラスさんである。

うぅ、罪悪感が。

「まぁ、いつでも俺の力が必要なときは、声をかけてくれ。シュニィの為ならいくらでも手を貸すぞ!」

「…ありがとうございます…」

アトラスさんは、こんなに良い人なのに。

私と来たら、彼に隠し事をして…。

…でもやっぱり、アトラスさん本人に相談することは出来なかった。

「…あの、さっきアトラスさんの部下が…郵便物を持ってきてくださったので、そこに置いてます」

私は、先程預かった郵便物の束を指差した。

ごめんなさい。その中から、一通抜いてます。

「分かった。ありがとう」

「そ、それだけです。じゃあ、また後で…」

「…?あぁ」

私が、あまりに挙動不審だからだろう。

首を傾げて訝るアトラスさんから、逃げるかのように。

私はアトラスさんの執務室を出ていった。

スカートのポケットに、彼宛のラブレターを潜ませて。