神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「シュニィ副団長、いらっしゃっていたのですね。こんにちは」

「えぇ、こんにちは」

この方は、面識がある。

刀剣部隊にいる、アトラスさん直属の部下だ。

私は魔導部隊だから、所属する部隊は違うのだけど…。

アルデン人の私相手でも、普通に接してくれる優しい方だ。

「団長は…まだお戻りではないのですね」

「えぇ、そのようですね…。前の任務が長引いているのかもしれません」

想定外の事態が起きて、大幅に任務が遅れている…という報告は入ってきていないので。

恐らく、もう少ししたら帰ってくると思うのだけど。

「アトラスさんに、何か…?」

「あ、いえ…。大した用事ではないのです。団長宛の郵便物を持ってきただけなので」

あぁ、そうだったのですね。

よく見たら彼の手元には、郵便物の束が握られていた。

「そうでしたか。なら私が預かって、アトラスさんが戻ってきたら、私の方から渡しておきましょう」

「え、宜しいんですか?」

「えぇ、構いませんよ」

私は、差し迫って忙しい用事などないし…。

アトラスさんが戻ってくるまで、少し、ここで待たせてもらおうと思っていたところだった。

なら、私が預かって、アトラスさんに渡せば良いだろう。

彼も忙しいのだろうし、何度も持ってきてもらうのは申し訳ない。

「ありがとうございます、シュニィ副団長。助かります」

「いいえ、良いんですよ。いつもご苦労様です」

私はアトラスさんの部下から、郵便物の束を受け取った。

「では、団長に宜しくお伝えください」

「はい。分りました」

彼は深々と一礼して、アトラスさんの執務室を出ていった。

良い部下を持って、アトラスさんは幸せ者ですね。

魔導部隊にいる私の仲間も、素晴らしい方々ばかりなので、勿論私も幸せ者です。

「…さて、と…」

アトラスさん宛ての郵便物を、テーブルの上に置き。

ちょっと、お茶でも淹れて…座って待たせてもらおう、と思った。

…そのとき。

「…ん?」

郵便物の束の中に、ピンク色の封筒を見つけた。

白や茶色ばかりの封筒の中で、ピンク色の封筒とは珍しい。

一体何処から送られてきた郵便物なのだろうと、私は何気なく、その封筒を手に取ってみた。

すると。

「…!」

ピンク色なだけではなく、封筒には、赤い大きなハートのシールが貼られていた。

およそ、聖魔騎士団に相応しくない封筒である。

私は、思わず送り主の名前を見ずにはいられなかった。