神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「私のこと、どうするつもり?」

「あ?」

ベリクリーデの別人格は、じっと俺のことを見つめていた。

「消すの?それとも、お仲間にバラす?」

「…お前、消えろって言ったら消えるのか?」

「どうかな。やってみたら、出来るかも」

…ふーん。

それも、悪くないのかも知れないが…。

「やめておくよ、…今のところはな。お前を消すことで、ベリクリーデがこれ以上不安定になったら、マジで神の再臨も有り得るからな」

そんな状況は御免だ。

大体こいつ、無意識とはいえ、ベリクリーデ自身が生み出した人格なんだろう?

ベリクリーデが自分を守る為に作った人格を、俺が殺してしまったら、ベリクリーデに悪いだろ。

「じゃ、他の人に言う?私の存在を」

「お前は、それを望むのか?」

「…望んでなんかないよ」

だろうな。

皆に話せば、色々大混乱だろうな。

それに…話すにしても、時期尚早だろう。

俺が見たところ、このベリクリーデの別人格は、日中常に現れている訳じゃない。

羽久のように、ほぼ毎日、常時表に出ている人格ではない。

オリジナルベリクリーデと交互に、コロコロと入れ替わっているようだ。

まだ、ベリクリーデである時間の方が長い。

恐らく、こいつもまだ生まれたばかりで、その身体に順応しきっていないのだろう。

この人格はまだ、生まれて間もない赤ん坊みたいなものだからな。

そんな状態なのに、他の奴にお披露目するのはまだ早い。

こいつの存在は、俺の胸の中だけに留めておくべきだろう。

…だが、これだけは聞かせてもらう。

「…お前の存在を、ベリクリーデ自身は知ってるのか?」

自分が入れ替わっていること、自分が別人格を作り出したことを…あいつは自覚しているのか。

知っているのなら隠す必要はないが、知らないのなら…。

ベリクリーデに、どう話したものか。

そもそも、話すべきことなのか…。

「全く気づいてない訳じゃない。朧気に気づいてる、ってところかな…」

「…」

鈍いな、あいつ。相変わらず。

いや、まぁ、多重人格者が、自分の中の別人格の存在に、必ずしも気づいている訳じゃないから。

ベリクリーデが知らないのも、無理はないか。

内心気づいてはいるが、確証は持っていない…そんな状態か。

成程。

…それから、聞きたいことはもう一つ。

聞きたいことと言うか…確認したいこと、だな。

「…お前、本当にベリクリーデの味方だな?」

ベリクリーデを乗っ取ろう、とか。

ベリクリーデのフリをして悪事を働こう、とか。

…ベリクリーデに代わって、神の力を行使しよう、とか。

一ミリでもそういうことを考えているのなら、俺はさっき、お前を消さないと言ったことを撤回しなければならない。