神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

頭の中で、ぼんやりと昔のことを考え。

そして、俺は軽く頭を振って、感傷に浸るのをやめた。

…今更思い出したって、仕方のないことだ。

「前の持ち主は死んだよ。もうこの世にいない」

「…」

「だから、そのとき近くにいた俺にお鉢が回ってきたって訳だ。それから手放す機会もないまま、ずるずる持ち続けてしまった…」

俺は無闇のように、この魔法武器を律儀に守り続けるつもりはなかった。

機会があれば、手放しても良かった。

だが、何千年経っても…そんな機会は訪れない。

結局情けないことに、この期に及んでも、俺の手の中にある。

…これも何かの因果か、運命なのか。

「ジュリス君…」

「滅多なことがない限り、使うつもりはねぇよ…。…忘れてくれ」

今回は緊急事態だったから、やむなく使用したが。

みだりに見せたいものじゃない。

「…分かったよ。もう、何も聞かない」

シルナ・エインリーが言った。

そりゃ有り難いね。

「…ありがとうね。魔剣を使って、ベリクリーデちゃんを助けてくれて」

「別に誰かの為じゃねぇ。…俺の為だよ」

封印しておくつもりだった『魔剣ティルフィング』を、皆の目に晒すことになっても。

それでも、ベリクリーデを助けたいと、俺が勝手にそう思っただけ。

だから、別に後悔はしてない。

「お陰で、くそったれな『オオカミと七匹の子ヤギ』の課題は解決したんだし、それで良しとしようぜ」

「そうですね」

羽久とシュニィも、俺に何も聞いてこない。

お気遣いどうも。

「…??まけん…?」

で、相変わらず話し合いについてこれていないベリクリーデ。

お前は本当に…。…うん、もう何も言うまい。

お前に聞きたいこともあるが、それは後だな。

「じゃ、ジュリス君。ゆっくり休んでね」

「おぉ。…その謎のガキについて何か手がかりを得たら、こっちにも情報回してくれ」

「勿論。逆に、聖魔騎士団が何か情報を得たら…」

「すぐに共有します。お任せください」

すかさず、シュニィが答えた。

「宜しくね、シュニィちゃん」

「じゃあな、ジュリス。お大事に」

「どうも」

別れの挨拶を交わして、シルナと羽久は、イーニシュフェルト魔導学院に帰っていった。

その後、シュニィも医務室を出ていった。