神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

ドッペルゲンガーの件については、ひとまずこれで一件落着。

しかし、ホッと安心する間もなく…。

「それで、その…ジュリス君」

「…何だよ?」

「個人的に凄く気になるのが…その、ベリクリーデちゃんを断絶空間から助けるときに…」

「…あぁ」

その話な。いよいよ。

聞かれるとは思ってたよ。

「はっきり言えよ。そんな遠回しに言わず…。『魔剣ティルフィング』のことだろ?」 

「…うん、そうだね」

あんたは知ってるもんな。あの剣の存在を。

「魔剣…魔剣って、何だ?」

羽久がそう尋ねた。

まぁ、まずはそこからだよなぁ。

「魔剣っていうのは、古の時代に造られた強力な魔法武器だよ。『聖宝具』と似てるかな」

と、シルナが解説。

ざっくりした説明だが、間違ってはいないな。

「…魔剣の存在は…本で読んだことがあります。伝説だと思っていましたが…」

博識なシュニィは、知識として魔剣を知っていたようだ。

伝説か…。

…伝説…だったら良かったんだけどな。

本当に存在してるんだぜ、これが。

「『聖剣エクスカリバー』と対を成す、闇の魔力を纏った剣…それが、『魔剣ティルフィング』だ」

「…でも、その行方はようとして知られず…。長い歴史の中に埋もれて、なくなったものだと思ってた…。…まさか、君が持っていたなんて」

おっと。

何だか、俺が隠していたかのような言い方だな?

まぁ、隠していたと言えなくもないが。

「こんなものが世の中に存在してても、誰の得にもならないからな。…二度とこの世には出さないつもりだった」

このまま未来永劫、俺の中に封印して…存在そのものをなかったことに。

シュニィの言うように、伝説の遺物にするつもりだったんだが。

…そう上手く行かないもんだな。

「別に盗んだものじゃないぞ。俺が魔剣を手にした経緯は…」

…。

…あまり、良い思い出じゃないんだが。

「…まぁ、色々…紆余曲折あって、俺の手に渡ることになったんだ」

「…魔剣を悪用するつもりなんて、君には欠片もないって分かってるから、根掘り葉掘り聞くつもりはないけど…」

そりゃ良かった。

「でも…これだけは聞かせて欲しい。…本来の持ち主は?君の手に渡る前に、誰かが魔剣と契約していたんじゃないの?」

…。

…そうだな。

本来の持ち主はそいつであって、俺じゃない…。

…けど、俺の手に渡ることになったんだよ。

…色々あったからな。