神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「まさか、最後の一人がベリクリーデとはな…。絶対俺だと思ってた」

羽久・グラスフィアが言った。

俺もそう思ってたよ。

他の六体は、皆イーニシュフェルト組だったのに。

何で最後の一人だけ、聖魔騎士団組のベリクリーデになったのか。

しかも。

「まさか、本物に成り代わりたいが為に、ベリクリーデさんを断絶空間に送るなんて…」

「うん…。戻ってこられたから良かったようなものの…」

「今回のドッペルゲンガーベリクリーデの所業に比べたら、イーニシュフェルト組のドッペルゲンガーは、まだ可愛いもんだったな」

…だろうな。

学院に現れたドッペルゲンガーは精々、本人に隠れて、こそこそ悪さをするくらいだっただろうが。

今回の、ベリクリーデのドッペルゲンガーは、ベリクリーデを殺しにかかってるからな。

これまでのドッペルゲンガーとは、やり口がまるで違う。

やってることの悪どさが、他の六体の比じゃない。恐ろしい。

それもこれも…ベリクリーデ曰く…。

「危なかったな、シルナ…。お前のドッペルゲンガーは腑抜けで。オリジナルの再現だったのかもしれない」

「…羽久が、私に失礼なことを言ってる気がする…」

「褒めてるんだぞ」

「ま、まぁまぁ、お二人共」

シュニィが、シルナと羽久の間に割って入った。

「ジュリスさんとベリクリーデさんには申し訳ないですが、他のドッペルゲンガーは比較的楽に始末出来たのですから、それで良かったとしましょう」

結局、マジで一番苦労したのは俺達だけ、ってな。

「しかし、何でベリクリーデのドッペルゲンガーだけ、そんなに殺意増し増しだったんだろうな」

…良い質問だな、羽久。

ベリクリーデの話を聞くに…それは多分、偶然ではない。

「オリジナルの再現…にしては、ベリクリーデは殺意どころか、悪意すら欠片も持ち合わせてないだろ」

俺もそう思う。

今だってベリクリーデは、自分のことを言われているのに、きょとんと首を傾げているだけだからな。

「何でベリクリーデのドッペルゲンガーだけ、そんな恐ろしいことをしたのか…」

「と、言いますか…ドッペルゲンガーなのに、断絶空間をご存知だったことに驚きました。ドッペルゲンガーが、何故断絶空間を知っていたんでしょう」

シュニィも、良いところを突いてくるな。

「ドッペルゲンガーには、そのような知識まであるのですか?学院長先生」

「いや…。オリジナルでさえ知らないことを、ドッペルゲンガーが知っているはずがないんだけど…」

「断絶空間を知ってるどころか、その断絶空間にベリクリーデを追いやった訳だからな。一体、何処からそんな情報を得たんだ…?」

…さて。

じゃ、ここいらで、俺も喋るとするか。