神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

…ベリクリーデを断絶空間に送った犯人については、ひとまず置いておいて。

「…助けるの、遅くなって悪かったなな」

「?早かったよ」

そうか?

お前にとっては、凄く長い時間だったんじゃないかと思ってな。

辛い時期や不安な時期って、普通よりやけに長く感じないか?

「でも、あれ以上…あの学校に残ってるのは嫌だったから、早く来てくれて良かった」

…学校?

「お前、学校に行ってたのか?」

「うん」

…マジで?

お前は頭が足りないから、そのまましばらく、学校に行かせておくべきだったか…?

「高校か?大学?」

「?古代文字専門学校だった」

何だ、その学校は?

俺も長いこと生きてるが、そんな学校は初めて聞いたぞ。

「どの授業でも、難しい古代文字が出てきて、それを読んだり解いたりしてた」

「そ、そんな学校があるのか…?本当に…?」

「うん」

…まぁ、世界って広いからな。

ましてやベリクリーデが送られていたのは、無秩序な断絶空間。

摩訶不思議な専門学校があったとしても、おかしくはない…のかもしれないが。

…。

…それ、アレじゃね?お前。

あまりに授業が分からな過ぎて、見るもの全てが古代文字に見えていただけ…、

「あと、シファちゃんと一緒に暮らしてた」

…誰?

「それから、パパとママとも一緒に暮らしてたんだよ」

パパとママ、だって?

「それは…断絶空間にいた頃の家族か?」

「うん。本当の家族じゃないんだろうけど」

…そういう「設定」だったんだろうな。

でも…。ベリクリーデの家族、か…。

「…懐かしかったか?」

「ほぇ?」

「家族と一緒に暮らすの…」

「?さぁ…。私、本物の家族と一緒に暮らしたことなんてないもん」

…そういや、そうだったな。

生活力皆無なのに、よく一人で生きてこられたもんだと思っていたが。

家族、いなかったんだもんな。

「…断絶空間にいた『家族』はどうだった?優しかったか?」

「うん、優しい人ばっかりだったよ。パパは特に良い人だったなぁ」

…そうか。

一時的な関係でも…血の繋がりがなくても。

ほんの少しの間でも、ベリクリーデに温かい家族が出来たことを、喜ばずにはいられなかった。