神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

犯人が子供かどうかは別にして。

協力者がいる可能性は、俺も考えていた。

と言うか、協力者がいなければ、あんなことは出来なかったはずだ。

ドッペルゲンガーは、ベリクリーデと同じ見た目をしているとはいえ、中身まで同じな訳ではない。

あれは所詮、魔法道具が作り出した幻影のようなもの。

おまけに、玩具だ。

ガラクタの玩具風情が、魔導師であるベリクリーデを、断絶空間に送り込めたはずがない。

誰かがドッペルゲンガーベリクリーデに協力して、本物のベリクリーデを追い出したのだ。

そしてその犯人が、ベリクリーデが見たという子供なのか…。

…一体誰なんだろうな。

全く、見に覚えがない…。

「どんな奴だった?そのガキは」

「…ジュリス、身体大丈夫?」

「いや、大丈夫だから。それより侵入者の、」

「良かったー」

良かったじゃねぇよ。

「お前の部屋に忍び込んできたガキは、どんな奴だったんだ?」

「…?分かんない。暗かったし、一瞬だったし…」

…そうか。

「でも、変なこと言ってた」

お?

「何だ?変なことって…」

「うーん…。うら覚えなんだけと…」

うろ覚え、な。

「楽しみがどうとか…。最後の一人くらいとか…。手を貸すとか…」

「…」

「そんなこと言ってた気がするなぁ」

…成程。

重要な情報なのは確かだが、それだけでは何とも…。

「あとね、臭かった」

「臭かった?」

「うん。だんぜくかんに送られる前の一瞬だけ、腐った死体の匂いがしたの』

…そういえば。

それは、俺も覚えがある。

ベリクリーデが消えた夜が明け、朝になって、ベリクリーデを部屋に起こしに行ったとき。

一瞬だけ…腐敗臭がしたような…。

「何だったんだろ?あれ」

「…そうだな…」

…ますます、謎が深まるばかりだな。

とにかく、分からないことが多過ぎるが…。

これだけは分かる。

そのガキは、間違いなく…俺達の敵なのだろう。