神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「そのドッペルゲンガーが、お前を断絶空間に送ったんだろう?だから、断絶空間で起きたことは全部、あいつの責任だ」

断じて、本物のベリクリーデの責任ではない…。

…と、思っていると。

「…」

ベリクリーデは、ぽやんとした顔で何かを考えていた。

…どうした?

何か思うところでも?

「どうした、ベリクリーデ」

「…あれって、本当に私のそっくりさんの仕業なのかな?」

は?

「部屋の中にね、二人いたの…。大人と子供が一人ずつ。一人は私のどっぺるで、もう一人は誰…?」

いや、ちょ…おい。

なんか今、ベリクリーデの奴、さらっと物凄く重要なことを言わなかったか?

真面目に聞くから、もう一回言ってくれ。

「ちょっと待て。ベリクリーデ、もう一人って何だ?」

「子供の人影。私がだんぜくかんに送られる前、寝てるときに部屋の中に来たの」

断絶空間な。

そうか。ドッペルゲンガーベリクリーデは、先にベリクリーデの寝室に侵入したのか。

そして、ベリクリーデを断絶空間に送り込んだ…。

…が、ベリクリーデは…単独犯ではないと言う。

ドッペルゲンガーベリクリーデだけの仕業ではない、と。

部屋の中にやって来た二人…。一人は、もう消えてしまった、ベリクリーデのドッペルゲンガー。

じゃあ、もう一人…子供の人影っていうのは、誰のことなんだ?

「その人影は…子供だったのか?」

「うん」

「見たことのない奴だったんだな?」

「うん。でも私、人の顔覚えるのが苦手だから、見たことがあっても忘れてるだけかも」

自覚はあったんだな。

人の顔に限らず、お前は大抵のことは、聞いた傍から忘れてるよ。

お耳がちくわだからな。

…とはいえ。

ベリクリーデの生活圏内に、子供はいないはずだ。

聖魔騎士団に、子供の隊員なんていないし。

むしろ、多分、聖魔騎士団で一番幼いのは、このベリクリーデだろう。

年齢がじゃなくて、頭の中身がな。

ベリクリーデ以下の子供なんて、ここにいるはずがない。

何で…どうやって、子供が入り込んだんだ?

聖魔騎士団隊舎は、夜間でも見張りを立てて、四方八方を警備している。

イーニシュフェルト魔導学院にいる、元暗殺者組でもあるまいし。

子供ごときが、監視の目を掻い潜って侵入してくるとは、とても…。

…しかし、ベリクリーデの証言を信じるならば、本当に子供が入ってきたんだろう。

そして、そいつが…ベリクリーデを、断絶空間に送り込んだのだ。