神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

――――――…ようやく、戻ってきたと思ったら。

俺が死にかけているのを見て、所構わず魔力を暴走させかけてんだから。

やれやれ、本当…困った奴。

「…大丈夫だ」

俺は鬼神の如く暴れ…そうになるベリクリーデを、躊躇わずに抱き締めて止めた。

そして、子供にするみたいに、背中をぽんぽんと叩いてやった。

子供みたいなもんだからな。実際。

「落ち着け、ベリクリーデ…。俺は大丈夫だ…」

「…私…私の、せい、で、ジュリスが、死…」

馬鹿め。

「思い上がんなよ…?お前に殺される俺じゃねぇっての…」

勝手に殺すんじゃねぇよ。…まだ死なねぇよ。

ましてや、こんな…情けない死に方で死んで堪るか。

…こいつを残して死んだら、後味が悪いにも程があるだろ。

「大丈夫だから、落ち着け。な?キュレム達を巻き込むんじゃねぇよ…」 

お前が暴走したら、洒落にならない被害が出るんだよ。

勘弁してくれ。

「でも、ジュリス…。…辛そう」

そりゃまぁ、辛いけど。

半端じゃない量の魔力を、一度に消費してしまった…。正直、死にそうだ。

だけど、そんな姿を見せたら、余計ベリクリーデが心配するに決まってる。

「大丈夫だ…。しばらくしたら、治るから…」

目の前がぐるぐる回っていて、意識も朦朧してるんだが。

それでも俺は、ベリクリーデに強がってみせた。

これでマジで死んだら、めちゃくちゃ格好悪いよな。

…すると、そこに。

「…ジュリスさん…!」

「ジュリス君…!大丈夫?」

地獄に仏とばかりに、シュニィと、シルナ・エインリーが駆けつけた。

ベリクリーデが暴走しかかってるところに、よく命知らずにやって来たもんだ。

おー…。なんか、俄然生き延びられそうな気がしてきた…。

二人が、ほとんど同時に回復魔法をかけてくれた。

それで魔力が完全回復する訳じゃないが、少しは楽になる。

「ジュリス君、君って子は…」

聞きたいことは、山程あるだろうな。

特に、俺の傍らに落っこちてる…赤黒い刀身をした、えげつない剣について。

俺だって、納得の行くように説明してやりたいよ。

…だけど。

「悪いが、後にしてくれるか…?」

逃げ隠れするつもりはない。

が、如何せん、今は…身体が持たない。

「勿論だよ。まずはゆっくり休んで」

「話をするのは、その後にしましょう」

そりゃ良かった。

すると。

「…ジュリス…」

「…ベリクリーデ…」

ベリクリーデが、なっさけない顔でこちらを見つめていた。

やれやれ。

「お前なぁ…。辛気臭い顔するんじやねぇよ」

「だって、ジュリスが…」

「大丈夫だって言ったろ?…お前を残して死ねるかよ」

どぶを啜って、石に齧りついてでも、生きてやるさ。

こいつを一人残して…死ぬ訳にはいかないからな。

…全く。

これだけ長生きして、今更いつ死んでも後悔はないつもりだったのに。

今になって、この世に留まる理由が出来るとはな。

人生って奴は本当に、自分の思い通りには行かないもんだ…。



…だが、悪い気分ではなかった。