神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

『聖剣エクスカリバー』に並ぶ秘宝。

あの『聖宝具』にさえ匹敵する、魔法武器。

闇の魔力を使うものだけが行使出来る、『魔剣ティルフィング』。

それが、今、俺の手の中にあった。

「…!魔剣だって…?お前、いつからそんなもの…」

魔力を大量に消費したことで、顔を歪めていたキュレムが、こちらを向いた。

いつから…か。

いつからと聞かれたら、そりゃ昔からだ、としか答えられないな。

「別に盗んだ訳じゃねぇ。何の因果か…巡り巡って、俺に託されることになっただけだよ」

俺が望んで手に入れたものでもない。

ただ、生きてたら…いつの間にか、俺の手に渡ることになっただけだ。

この剣の存在を…誰かに話したことはなかった。

話すつもりもなかった。

こんなものは、二度と使わないつもりだった。

自分は勿論使わないし、他人に使わせるつもりもなかった。

このまま一生、存在そのものを闇に葬り、謎に包まれたまま終わらせるつもりだった。

…でも、そうは行かないものだな。

人生、なかなか自分の思った通りには行かないもんだ。

そうだよな。

長いこと生きてりゃ…そういうこともあるよな。

でも、今は良かったと思う。

この魔剣のお陰で、ベリクリーデを助けに行けるのだから。

…さぁ、やるか。

俺は、自分の首筋にナイフを這わせ、思いっきり引いた。

噴水のように、血飛沫が迸った。

「っ!ジュリス…!?」

「…っ…。大丈夫、だ…」

こうしなければ、魔剣は発動しない。

「俺の、血を捧げる…」

魔剣の刀身が、俺の血の色に染まっていった。

沈黙していた剣は、息を吹き返したように輝きを増した。

禍々しい輝きを。

「起きろ…『魔剣ティルフィング』」

血を媒介に、魔剣は力を増す。

俺は、禍々しい光を放つ魔剣を振りかぶった。

「…今、助けに行くからな。…ベリクリーデ」



魔剣の切っ先が、亀裂の入った断絶空間に突き立てられた。