神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「はぁ…はぁ…」

一体、どれだけ走っただろう。

知らない街の中、土砂降りの雨の中を、ひたすら。

息が続かなくなって、私は立ち止まった。

…悔しい。

これだけ探して、何も見つけられないことが…悔しくて堪らない。

だけど、私は諦めない。

私を探してくれているあの人もきっと、私を諦めたりしないだろうから…。

見つからないなら、見つかるまで探すだけのこと。

声以外、何の手がかりもないけれど。

それが何だって言うんだ。

あの夢。私を呼んだ声。何もかも全部、本物なのだ。

「今…今、行くから…」

探し出してみせるから。私、忘れないから。

諦めたりしないから。

手を差し伸べてもらってるだけじゃ駄目だ。

私の方から、手を伸ばさないと…。

私は拳を握り締めて、再び走り出そう…と、したが。

「ちょっと君、こんなところで何してるの?」

「…ほぇ?」

危うく、聞き逃してそのまま走り出すところだった。

自転車に乗った、雨合羽を着たお巡りさんだった。

お巡りさん…?お巡りさんが、私に何の用?

と思ったけど、私は今、頭から爪先までびしょ濡れで。

制服から水を滴らせながら、街の中をがむしゃらに走り回っているのだ。

私自身は必死だけど、知らない人の目から見たら、多分びっくりするような光景だったのだろう。

そりゃ、お巡りさんも声をかけてくる。

「その制服…何処の学校?この辺じゃないよね?」

「…」

…どうしよう。

今、お巡りさんとお喋りしてる暇なんてないんだけど。

それなのに、お巡りさんはじろじろと私を見ながら、私の進路を塞ぐように前に立った。

「学校は?もう授業始まってる時間でしょ」

「…」

…そうだろうね。

学校のことなんて…今はどうでも良い。

それなのに。

「どうしたの?家出?」

お巡りさんは、呆れた顔でそう聞いた。

「…家出じゃないよ」

むしろ、逆だ。

私は、自分の居るべき場所を探そうとしてるんだよ。

だけどそんなことは、お巡りさんには分からないので。

「あ、そう。とにかく、ちょっと来てもらえる?」

…逮捕されちゃった。

もしかして手錠をかけられて、豚小屋に入れられるのかと思ったが。

かろうじて、手錠はかけられなかった。

でも…もし私が今、走ってこの場から逃走したら。

きっと追いかけてきて、今度こそ、手錠をかけられるのかも。

「…」

こうなったら、私はこれ以上動き回ることは出来なかった。

潔く、大人しくお巡りさんについていく他、どうしようもなかった。