神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

南行きの列車に揺られること、およそ2時間あまり。

辿り着いた終点で、私は列車を降りた。

…うん。

…ここ、何処だろ?

多分、学校から程遠い場所にいるであろうことは確かだ。

でも、もう授業始まってる時間だもんなぁ…。

今更引き返しても、遅刻は確定してるし。

今頃シファちゃん、私が来てないことに気づいてるんだろうな。

まさか、こんなところにいるとは思ってないだろう。

私も自分がこんなところに来るなんて思ってなかったから、お互い様だね。

今から、学校を探す気にもなれず。

列車を降りた私は、駅を出て、南の都市を歩いてみることにした。

…何か見つかるかもしれないと思って。

自分が、一体何を探しているのかも分からないのに。

「…うわー、凄い雨だ」

家を出たときは小雨だったのに、2時間たった今は土砂降りだった。

こういうのを、あれだね。…ポリタンクを引っくり返したような雨、って言うんだよね。

…あれ?ポリタンクだっけ?

こういうとき、いつも私に教えてくれる人がいた、ような…。

あれは一体、誰、

「…あ」

そのとき、私は気がついた。

…持ってきたはずの傘、列車の中に忘れてきちゃった。

「あーあ…」

しょうがない。忘れちゃったものは。

確か昔は、雨だろうが風だろうが雪だろうが、気にせず過ごしていた気がするから、良いや。

…それで、昔って…いつのことだっけ?

…何も思い出せないね、私。

思い出したいのに、喉に引っ掛かったみたいに出てきてくれないの。

肝心なことは、何も。

「どうしよっかな。これから…」

もう一回列車に乗って、改めて学校を探そうか?

遅刻は確定してるけど、他に行くところもないし。

…他に、私が行くところ…。

…と、思ったそのときだった。


『…ベリクリーデ』



「…え?」

誰かに、名前を呼ばれたような気がした。