その日の夜。

私は、ベッドに横たわって、暗い天井を見上げていた。

…一日経ったけど、やっぱり何も思い出せないや。

どうやったら、思い出すんだろう…?

ショック療法だろうか?頭をがこーん、とぶつけたら思い出すだろうか?

…痛そうだから嫌だな…。

「ベリーシュ、今日は怒られなくて良かったね」

隣のベッドで寝ているシファちゃんが、私に向かって言った。

まだ起きてたんだ。

「うん、良かった」

でも、次はないって言われちゃったからな。

次のテストまでに、何か思い出していれば良いんだけど…。

「なんかベリーシュ、今日一日変な感じだったね。まるで…記憶喪失の人みたい」

と、シファちゃんは面白がった風に言った。

記憶喪失の人だからね。

パパのこともママのことも、シファちゃんのことも分かんないや。

…私のことも。

ママが私のことを「娘」って言ってたから、私はやっぱり、居候とかお友達じゃなくて…パパとママの娘なんだ。

多分。

だけど私は、パパのこともママのことも知らない。

いたの?そんな人が。

私の人生に、生まれてこの方、両親の存在が介入したことがあっただろうか。

そして、シファちゃんのことも。

「…ねぇ、シファちゃん」

「んー?」

「…君って、一体誰なの?」