神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

翌朝。

「ふぁ〜…。おはようございます」

「あ、お前…」

昨日の晩、悲鳴を聞きつけて、校舎内にやって来なかった唯一の教師。

ルーチェス・ナジュ・アンブローシアが、眠そうに伸びをしながら職員室にやって来た。

「お前、何で昨日の晩来なかったんだよ?」

「はい?」

はい?じゃねぇよ。

別に、絶対来なきゃいけない訳じゃないけど。

教師の中で、一人だけ来てなかったもんだから。どうしても気になるだろ。

「悲鳴が聞こえなかったか?」

「悲鳴?あぁ…。女子生徒が二人、なんか叫んでましたっけ…」

やっぱり、聞こえてたんじゃないか。

「でも、あのとき僕、リリスとイチャイチャしてたので」

「…」

「リリスを優先しました」

…この野郎…。いけしゃあしゃあと…。

「どうせ、羽久さん達が対応してくれると思ったので。実際…そうだったみたいですね」

「そうだよ」

お得意の読心魔法で俺の心を読み、昨夜の経緯を知ったらしい。

そりゃまぁ、結局大したことはなかったけどさ。

これがもし、『アメノミコト』からの刺客とか、他の良からぬ…ヴァルシーナ辺りの襲撃だったら、どうするつもりだったんだ。

「そのときは起きますよ…。…多分」

自信をなくすな。

いざというときは、ちゃんと起きて欲しいものだな。全く…。