天音とナジュの、ちょっとした機転と。

イレースの、末恐ろしい雷魔法により。

無事にナジュのドッペルゲンガーを撃退…したのは良いものの。

ナジュは不満たらたらであった。

「全く…皆さん薄情なんだから」

自分のドッペルゲンガーを見抜いてもらえなかったのが、余程不満な様子。

それは申し訳なかったけど…でも仕方ないだろ。

「僕なんて、一発で皆さんのドッペルゲンガーを看破出来ますよ？」

そうかよ。

そりゃお前には、読心魔法があるからな。

俺達にはないから。分からないのは当たり前だろ。

「ご、ごめん。ナジュ君…」

天音だけは、申し訳無さそうに謝っていた。

いや、天音が悪い訳じゃないと思うけど。

「良いですよ、天音さんは。天音さんが機転を利かせてくれたお陰で、ドッペルゲンガーを見抜くことが出来たんですから」

「うん…。本物のナジュ君が戻ってきてくれて、良かった」

「イケメンカリスマ教師が二人、っていうのも悪くなかったですけどね」

「あなたみたいな破廉恥教師が、二人も三人もいて堪りますか」

イレース、辛辣。

「…チョコレート、食べてもらえなかったな…」

シルナは何を言ってんだ。

偽物のナジュに、チョコプラリネを食べてもらえなかったことを気にしているらしい。

どうでも良いわ、そんなの。

「…仕方ない。ここにいるメンバーで、改めてチョコプラリネを、」

「そろそろ授業が始まる時間ですね。早く行かなくては」

「僕も、一限から実習授業なので。稽古場行かないと」

「あぁっ…」

イレースとナジュに、あっさりと見捨てられ。

「え、えっと…。今は時間がないので…後で、有り難く頂きますね」

天音だけは、ちょっと優しかった。

え？俺？

俺は…あれだよ。

「羽久！羽久は私を見捨てないよね！チョコ食べよ！ね！」

「悪いけど、俺も一時間目、授業だから」

「羽久ぇぇぇぇ」

仕方ないだろ。ナジュのドッペルゲンガー騒ぎで、職員会議どころじゃなかったんだ。

無事にドッペルゲンガーを撃退することが出来て、それで良かったと思おう。