神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「本物のナジュ君にしか、読心魔法は使えないんだよね?ドッペルゲンガーの方は読心魔法を使えない」

「…そのようですね」

だよな。

「だったら、これをこうして…」

天音は、二人のナジュに見えないように、両手を後ろに回し。

片方の手に、さっきシルナにもらった、紙に包まれたチョコプラリネを握り。 

二人のナジュの前に、空っぽの拳と、チョコを握った拳を突き出した。

「はい。僕がチョコを握ってるのは、どっちの手でしょう」

…成程、そういう判別をするのか。

チープなやり方ではあるが、今ばかりは、これは良い方法だ。

本物のナジュなら読心魔法を使えるから、天音の心を読んで、チョコを握った手を百発百中で当てることが出来る。

が、偽物のナジュには読心魔法が使えない。

従って、右か左、二分の一だ。心が読めなければ、いずれ外す。

「右ですね」

即答する後ナジュ。

そして、先ナジュも。

「えぇ、右です」

…とのこと。

そして、二人のナジュの意見が一致するということは…。

「…正解。右だよ」

天音が右手を開くと、握っていたチョコプラリネが姿を現した。

一問目は…二人共正解、か。

「じゃあ、二問目行くね」

「…こんな決め方で本物かどうか判別するのは、浅慮なのでは?」

先ナジュが、不平を口にしたが。

「分かりやすくて良いと思いますけどね。…それと、二問目もまた右です」

後ナジュは、早々に解答を口にした。

また右なのか…。

「…先ナジュ君は?右?左?」

「僕も右ですよ」

…二人共右か。

じゃあ、二問目も右、

と思いかけたそのとき。

「ふっ。引っ掛かりましたね?」

「え?」

後ナジュが、にやりとして先ナジュに向かって言った。

「本当は左ですよ。ねぇ?天音さん」

「…そうだね」

後ナジュに促され、天音は手のひらを開いた。

右手は空っぽで、チョコレートは左手に握られている。

驚愕に目を見開く先ナジュ。

…これでハッキリしたな。

「あなたは読心魔法を使えないから、必ず僕の後に解答しなければならない。僕の言った通りに。だから、ちょっとカマをかけてみました」

「…!そんな、卑怯な…!」

「卑怯なのは、勝手に僕のフリをしているあなたでしょう」

…ごもっとも。

引っ掛かったお前が悪いよ。

「…それでは、さようなら。…呆気なかったですね」

せせら笑う本物のナジュの、横に。

「…今生の名残は尽きましたか?」

雷をまとってバリバリと音をたてる、イレースの姿があった。

…アデュー。