神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

室内に、同じ顔の人物が二人。

既に何回も見た光景だが、何度見ても慣れない。

全く同じ顔をした人間が、二人並んでいる姿は。

「あれ?どうしたんですか皆さん。素っ頓狂な顔…。…あ」

後から来たナジュが、既に室内にいた、自分と同じ顔の別人を見つけた。

「…」

「…」

しばし無言で見つめ合う、二人のナジュ。

…異様な光景である。

先に口を開いたのは、先に来た…先ナジュであった。

「…皆さん、騙されないでくださいね。僕が本物で、あっちが偽物です」

そ、そうなのか?

すると。

「ちょっと待ってくださいよ。何白々しいこと言ってるんですか。偽物はそっちでしょう」

と、後から来た後ナジュが否定する。

…そうなのか?

申し訳ないけど、毎度のことながら、俺には区別がつかないよ。

二人で話し合って、どちらが本物なのか決めてくれないか。

両者共に本物であると主張する、これまた令月・すぐりパターンのドッペルゲンガーだな。

正しくは、令月・すぐり・イレースパターンか。

見分けるのが難しいパターン。

「いや、明らかに偽物の癖に、何言ってるんですか」

「しらばっくれるにも程があるでしょう。偽物はあなたですよ」

そう言われると、二人共偽物に見えるから不思議。

本物のナジュは何処に。

「羽久さん!」

「な、何?」

後ナジュが、がばっ、とこちらを向いた。

「羽久さんは、僕が本物だって分かりますよね?見分けられますよね?」

「…いや、悪いけど俺には分からん」

「薄情!」

そう言われても。

だって同じ顔してんだもん、お前ら。

「天音さん!」

「ど、どうしたの?」

「天音さんなら分かりますよね?僕達親友ですもんね!」

と、天音に縋ってみても。

「え、えーと…。…ごめん…ちょっと分かんないかな…」

「…親友だと思ってたのは…僕だけだったんですね…?」

「ご、ごめん…」

「イレースさんは!?あなたなら、僕の偽物だってわかっ、」

「遅刻してきたのは、偽物も本物も同じですしね」

確かに。

「…良いですよ。ヒーローは孤独な生き物ですから」

そうか。