神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

いつドッペルゲンガーが現れるか、ハラハラしている俺をよそに。

イーニシュフェルト魔導学院は、いつも通り回っていた。

「はいっ、じゃあ今日も職員会議を始めるよ!」

早々に自分のドッペルゲンガーを片付けたシルナは、相変わらず呑気で。

学院長室にて、他の教師達を集めて、職員会議を行っていた。

一応、イーニシュフェルト魔導学院でも職員会議はあるんだぞ。

…とはいえ。うちの職員会議は。

「じゃあまずは、チョコを配るね〜」

普通の職員会議なら、「本日の資料を配布します」と言うところだろうが。

うちの職員会議に、会議資料などない。

代わりに、学院長であるシルナからチョコレートを配られる。

全くもって、会議には必要ないものである。

必要だと思ってるのはシルナだけ。

「今日のはね〜美味しいよ!私のおすすめのお店のチョコプラリネだからね!」

満面笑みで、チョコプラリネを配るシルナである。

「どうも…ありがとうございます」

「…全く、また無駄遣いをして…」

天音は苦笑いで、イレースは溜め息混じりにチョコレートを受け取る。

そのとき、いくら要らないからって、シルナの差し出すチョコレートを「要らない」と言ったら。

シルナは、「何で!?美味しいのに!会議で頭を使うんだから、糖分摂取しなきゃ駄目だよ!糖分!とうぶーん!」

とか何とか、うるさく叫びまくる。

何が糖分だよ。

従って、受け取らないという選択肢はないのである。

大抵イレースは、その場で受け取って、後でナジュとか、令月やすぐりにあげているらしい。

「はいっ、羽久どうぞ!」

「…どうも」

にこにことプラリネを差し出すシルナから、チョコレートを受け取る。

全く、どんな緊急事態でもチョコレートだけは忘れないシルナである。

「そんなことより、本日の議題を…」

「そんなこと!?チョコレートは大事だよ!」

「喧しいですね」

と言って、イレースは舌打ちをしていた。

ま、まぁまぁ。

「『オオカミと七匹の子ヤギ』とかいう魔法道具について、進捗状況を話し合わなければならないでしょう」

…だよな。

「今のところ退治したのは、学院長先生と、僕と、令月君とすぐり君の二人、それから…最近、イレースさんのドッペルゲンガーを倒したんだよね?」

「そうですね」

「だったら…残るドッペルゲンガーは、あと二体ってことか…」

「…」

あと二体…。

そう言えば、何だかあと少しのような気がするが。

俺としては、残るあと二体が凄く重く感じるよ。

だって、この流れで言えば。

きっと残る二体のうち一体は…。

…と、俺が言いかけたところ。

「ちょっと待った!」

シルナがストップをかけた。