神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

あれ?

俺もしかして、タイムマシンでも乗ったか?

さっき、全く同じやり取りをした気がするんだが?

俺だけパラレルワールドにでも迷い込んだか?

と、思ったが。

シルナをちらりと見ると、シルナもぽかんとしていた。

やっぱり、そうだよな?

何だ?この…同じテープレコーダーを、2回再生したみたいなやり取り…。

「じゃ、私はこれで失礼します」
 
一人だけ、このタイムリープに気づいていないらしいイレースが、学院長室から出ていこうとしたが。

俺は、そんなイレースを引き留めた。

「ちょ、ちょっと待て、イレース」

「何です?まだ何か?」

お前、気づいてないのか?

「何でまた戻ってきたんだ?さっき、全く同じやり取りをしたよな?」

「は…?」

イレースは顔をしかめて、「何言ってんだこいつ」と言わんばかりにこちらを見ていた。

いや、何言ってんだ、は俺の台詞だから。

「つい5分くらい前だよ。お前、さっき学院長室に来て、同じやり取りしたよな?」

「…何のことです?」

「いや、さっき来てたじゃん。今日これで二回目だぞ」

「何を馬鹿なことを…。今日私が学院長室に来たのは、これが初めてですよ」

…マジで?

一体どうなってるんだ?

俺とシルナだけ、時間を巻き戻されたかのような…。

そして。

俺はそのとき、一つの可能性に思い当たった。

「…!まさか…!」

全く同じ人物。全く同じやり取り。

俺達を悩ませている、『オオカミと七匹の子ヤギ』。

それはつまり…。イレースもまた…。

「シルナ…これって…」

同意を求めて、俺はシルナに声をかけた。

すると、シルナも頷いた。

「うん…。多分…」

…だよな。

そうじゃなきゃ有り得ない。

ドッペルゲンガーだ。

今ここにいるイレースか、あるいはさっき学院長室に来たイレースのどちらかが。

どちらかがオリジナルのイレースで、もう一方がドッペルゲンガーなのだ。

ドッペルゲンガーが、本物のイレースさながらに、イレースのフリをしているのだ。

…令月・すぐりパターンだな。

これは、見分けるのが難しそうだ。